前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。
目的があるからがんばれる
2013年(平成25年)4月16日
冬の間だけ週4回になる工場内運動では、ずっとボクシングを学んでいる。
俺も真剣にやってるからコーチもきちんと教えてくれる。
この3ヶ月間はジャブとストレートに集中。
今日、「始めの頃よりもずっと良くなった」とお褒めの言葉をいただき、すっかりその気になって喜ぶ単純な俺、その後はいつもの数倍夢中になったよ。
はははは......。
前に出す足がカカトとから入るクセも良くなり、退がりながらもジャブが出せるようになった。
ストレートの際は腰をひねって肩を回し、体重を乗せる。
この一連の動きも、意識しないままにできるようになっているらしい。嬉しい。
前に進んでいる気がする。
あとはリズムだ。
このリズムが途中途中で途切れるのは自分でも感じる。
便所のドアのガラスを利用してシャドーボクシングに務めるものの、それが良いフォームかどうかもまだ判らない。
でも、それでいい。
ただ、健康のために、というのでは飽きてしまって長くは続かない。
何かを習って、自分が向上してると思うから、自然とやる気も湧いてくるのだ。
やはり目標を持ってことが大事だ。
まあ、身体を鍛える一番の目標は、出所後にパワフルなセックスをするためなんだけどね。