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俺の、最後の獄中絵日記 第102回

受信恐怖症

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前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は現在、北海道は月形刑務所で服役中。こんなことは今度で最後!と心に決めた武二郎は、今のみじめな境遇をいつまでも忘れないために、日々の暮らしを支給された唯一のペン=ボールペン1本で描くことにしたのだった。


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受信恐怖症


2013年(平成25年)4月15日


手紙が届いたよ。

送ってくれたのは、おふくろの様子を教えてくれるMとKの夫婦(仮名)からだ。

Mの名前でしか登録してないが、今回の手紙はKちゃん(Mの妻)の筆によるものだった。

封筒には付箋がついており、「Kさんについても登録してください」と書いてあった。

   

(その数時間前)

   

工場で作業中に名前を呼ばれて、手紙受取簿に指印を押す。

誰かから手紙が来たのだ。

ただし、この時点ではまだ誰からの手紙か分からない。

ほとんどの相手と文通が許可されなかった俺には、のんきな手紙のやりとりをしている相手はいない。

だから、この時から実際に手紙を受け取るまで、色々と考えてしまい、どうしても不安になる。

つまり、緊急の要件が書かれている可能性が高い。

おふくろに何かあったのか、来庁調べの件で何か異変が起こったのではないか──この心境が辛いから、手紙の受信はありがたくない。

作業が終わり、風呂へ向かうため着替えて廊下に整列した際、ようやくオヤジから手紙を手渡された。

それが、このMとKの夫婦からの手紙だったのだ。

Mに何かを頼んだわけでもなく、返事を待っている身でもないので、余計におふくろの身を案じてしまう。

風呂から帰って、急いで封を開くと、その手紙にはこんな事が書かれていた。

<私(=Kちゃん)が外出先でくしゃみをした拍子に腰の骨を折って救急車で運ばれ、現在自宅からリハビリに通う毎日ですが、検査の際にガンも発覚。その治療も始まったので、後藤サンのお母さんのところへは先月から電話していなくてゴメンナサイ......>

バカヤロー。そんなこと、どうだっていいよ。

俺より、よっぽど大変そうじゃないか。

すぐに手紙を出そう。

でもなあ......これでまた俺の受信恐怖症も重症になったよ。


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