>  > 手紙
俺の、最後の獄中絵日記 第97回

手紙

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

手紙


前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!


enikki_097.jpg


2013年(平成25年)4月10日


この刑務所へ来てから、ほとんどの相手との文通が不許可になった。

かろうじてM夫婦(仮名)がおふくろのところへ時折連絡して、様子を伺い、俺に知らせてくれる。

手の震えから手紙を書かないおふくろの様子を知るには、今のところこの夫婦だけが頼りだった。

前日の保護司からの手紙で、俺の先輩方や後輩がおふくろに声をかけに来てくれているとのこと。

俺とは連絡が取れなくなっても、おふくろのことが気にかかる俺の気持ちをくみ取って、気を遣ってくれる人達に感謝。

さらに今日、N君(仮名)からも手紙が届く。

N君とは共通の友人はないが、「おふくろさんのこと心配してるでしょうから、言ってくれたら電話するし、何かあれば訪問しますから言って下さい」との内容にありがたく頭が下がる。

こうして皆が心を気遣ってくれているのに、当の本人である俺が、それに甘えるばかりなのが心苦しい。

しかし、あまり大きな声では言えないが、おふくろから手紙を受け取ると、いつもその内容に不安になったり心配したりと精神的に参るから、実は手紙はないほうがありがたい。

でも、俺は欲しくなくとも、おふくろは手紙を欲しがっていると聞く。

決めた。

月に1通、いやそれ以上、許される限りおふくろへ手紙を出そう。

ガラではないが、決めた。


   


でも、返事はいらないと付け足そう。