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俺の、最後の獄中絵日記 第96回

デキる男

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デキる男


前回までのあらすじ
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!


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2013年(平成25年)4月9日


俺は何年も便秘と戦って来て、一番スムーズに便の出るのはコーラック(玉)2錠と漢方のアローゼン1袋のコンビだと行き着き、以来、毎夜このコンビと一緒に生きてきた。

にもかかわらず、留置では、漢方のほうがなく、拘置では、玉のほうがない。

どちらか一方では、30%の力も発揮してくれないのだ。

不完全燃焼の辛さに苦しむ。

しかしここ月形へ来た日の診察で、漢方のアローゼンを定期薬として処方してくれたのは助かった。

あとはコーラックのほうだ。

あるにはあるそうなのでホッとするも、「定期では出せないので、工場で週1回ある医務回診の際に毎回投薬を申し出てもらってくれ」とのこと。

多少、面倒くさいが、それさえ我慢しれば必殺のコンビを手にできるのだ。

そして先週、定期薬の補充と医務回診が重なると、作業中にオヤジは言ってきた。

「お前、定期薬で便秘の薬もらってんのに医務回診でも投薬申し込んでるのか! 定期でもらってる薬だけでやれや!」

オヤジは医者が俺に何と言ったか知らないのだ。

しかし俺は偉かった。

これまでの俺なら、ちゃんと許可もらっていると食い下がったと思うが、それじゃ後々つまらないだけ。

ここはひとまず「はい」と言って1週間の我慢。

そして1週間経った今日の医務回診でオヤジに投薬の申し込みをすると先週の定期薬の補充の件は案の定もう忘れていて、「便秘の薬な」と受け付け完了。

これだ。

常に先を読んだこういう行動ができてこそ、デキる男と言えるのだ。