「危険行為をした者」の定義とは
6月1日から「自転車講習」(正しくは自転車運転者講習)の制度がスタートする。
制度の概要については、マスメディアがばんばん報じてる。こうだ。
・信号無視など14種類の違反を「危険行為」とする。
・3年以内に2回以上、危険行為をした者に自転車講習を受講させる。
・自転車講習は3時間、5700円(1時間1900円)。
・受講しなければ5万円以下の罰金。
自転車の傍若無人な悪質運転はびしびし取り締まられ、激減する...なんて世間は思うんだろうか。だが、俺としては大いに首をひねらざるを得ない。
「危険行為をした者」とは何か、ここが重要なポイントだ。
単に「した者」じゃない。警察官から「注意された者」でもない。『警察公論』5月号に警察庁交通企画課がこう書いてる。
「危険行為をしたことの認定は刑事事件として検挙したことをもって行い、指導警告にとどまる場合は含まないこととしている」
「危険行為をした者」とは、「危険行為をして取締りを受けた者」なのである。
なぜ、取締りを受けた者に限定するのか。
刑事事件として扱われ、自転車の違反といえども刑罰の対象になる危険な行為なのだと身をもって知ったのに、3年以内にまた取締りを受けるような者は、将来に交通の危険を生じさせるおそれがある。よって講習を受けさせ改善しなければ、という論法だ。
この制度に実効性をもたせるためには、かなりの者に講習を受けさせねばならない。そのためには、かなりの取締りを行わねばならない。
じゃあ、新制度スタート後、どれくらい取締りを行うのか。
自転車の違反の取締りは、昔は全国で1年間に100件前後、せいぜい200数十件、それが普通だった。たった10件の年もあった(1996年)。
ところが2006年に警察庁が号令をかけてから、ぐんぐん増えた。てか激増した。2014年はなんと8070件!
だがこれ、昔と比べれば激増なんであって、クルマ・バイクに対する取締り(2014年は約970万件)に比べれば、微々たるものにすぎない。
自転車の悪質違反はテレビがよく取り上げたりしているのに、なぜ8070件ぽっちなのか。

▲これが警察庁の「自転車警告指導カード」だ。