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シリーズ 達人に訊け

刑務所の慰問を続けて30年以上 まだまだやりますよ!

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死刑囚の前で「アノ言葉」を

──慰問団「統幕芸激隊」を率いられていますね。

才賀  芸で激励するから、芸激。今は以前ほどの大所帯じゃないけど、正式な発足は93年で、一時期は100人くらいいました。噺家だけじゃなくて、太神楽や尺八のプロもいます。歌あり、踊りあり、下ネタもやります。

 ただし、あたしたちの芸は、笑わせるだけではありません。「本当は刑務所にいてはいけないんだ」と気づいてほしいし、真面目に服役した後はきちんと社会復帰してほしい。

 そういう思いを込めて、「面会に来た母親との別離」とか、しんみりさせるような演出もあります。

──失敗談とかありますか?

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才賀 もちろんありますよ。たとえば「首吊り事件」。東京や名古屋、大阪などの拘置所には死刑囚がいて、慰問を見に来ることもあります。やっぱり死刑囚って、刑務官もいろいろ対応が慎重なんですよね。

 それで、死刑囚も参加していた慰問の時に、芸激隊のメンバーの一人がついうっかりと古典落語の「子ほめ」をやってしまった。

 この話は、オチが「首吊り」なんですよ。落語によく出てくるオッチョコチョイのキャラクターが、「(お宅のお子さんに)あやかりたい」とお世辞を言うべきところを「首吊りたい」と言い間違えるという話。いくらなんでも死刑囚の前でそれはまずいでしょ。

 でも、本人は話し始めてから気づいたもんだから、勢いで最後までやっちゃった。そうしたら......普通にウケてたんだけど、あん時は参りましたね。詳しい経緯は拙著『刑務所通いはやめられねぇ ~笑わせて、泣かせる落語家慰問~』(亜紀書房)に書いてありますので、ぜひお読みください。

──師匠ご自身は、死刑については、どのようにお考えでしょうか。

才賀 原則的には死刑存置派です。ただし原則。被害者や被害者遺族の感情を考えたら、死刑は絶対必要だと思う。でも、刑務官さんたちのことも考えるんです。あたしは現場の苦労話をたくさん聞いています。毎日世話をしていた相手なんだし、できれば執行なんかしたくないですよね。中には「執行はしたくない。獄死してほしい」と本音を漏らす刑務官さんもいらっしゃいます。

 だから、判決は「死刑」で、執行しないというのが理想ですね。

──終身刑については、いかがですか?

才賀 無期懲役は、仮釈放という出所の望みがあるから、みんなマジメに務めるわけです。終身刑にはこの望みがありませんから、「どうせ俺は獄死するんだ! だったら何やっても同じでぇ」てなことになりますよ。そうなれば、刑務官の言うことなんか聞きませんよ。まあ無期懲役と死刑は、ちょっと差がありすぎますよね。じゃあ、どうすればいいのか。だから、あたしは「無期」と「死刑」の間の新しい刑罰を考えてみました。

 それは......「半殺し」です。半分だけ殺す、ってのを提案します。