〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!
へー
2013年(平成25年)3月22日
テレビのニュースを生放送で観せる刑務所は初めてだが、俺はシャバでもニュースは観ないし新聞も読まない。
だから世の中の動きが判らない。
今、騒がれて入るTPP といえば予防接種の事かと思い、円安円高も自民民主の違いも知らず、果ては首相の名を尋ねられても答えられない。
現実社会では殺人事件が日常的に起こり、いじめ虐待、老人を狙った卑怯な事件がまかり通っている事も知らず、原発被災者の事もどこか他人ごとだったわけだ。
そんな俺がいくらこの刑務所の中で懲らしめられ、罪を精算しようとも、社会情勢を何も知らないまま社会復帰するわけだから、一般の人たちから大きく浦島太郎なわけだよ。
だけど毎日夕方6時からのニュースを観ているだけで、数多くの事を知ることができた。
わずか3ヶ月の間で、だ。
新聞が読めるのは運動時間なんだよ。
俺はびっちり運動するから新聞は今後も読めないし、読むつもりもない。
休みの日の回覧新聞っつったって、時間に限りがあるからテレビ欄ぐらいしか目を通せない。
それでも夕方1時間のニュースで結構な情報が入ってくるのだから、ニュースの力ってすごいね。