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俺の、最後の獄中絵日記 第71回

ウザい男

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!


ウザい男


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2013年(平成25年)3月7日

おい!
右手が!
右手の指が太いよ!

今週3日間の連日の棒ヤスリ作業が原因で手が握れないよ。

確かに世の中には我慢強い男が結構居るもので、少々の事では痛いと言わない奴がいる。

まして刑務所の中では泣き言言ったってロクに看てはもらえず、ケガの仕方によっては「作業の手順を無視したお前が悪い!」とケガした上に懲罰になるなんてザラだ。

だから、刑務所では、痛みに強いこと=男気なんだ。

ブリッジかけた歯の根っこの2本がグラついて痛いからと、医務診察が待てずにむしりとった男や、ミシンのボビンに引っ掛けて親指半分落としかけた男、10cm針のエアタッカーで指3本を串焼きのようにブチ抜いた男など何人も見て来たが、皆、医務にも行かず、痛いとさえ言わないのだ。

こんな男らしさ、俺にはまるでな―――――――い。

何つったって俺は、深爪しただけで一日中テンションが上がらない男なのだ。

ちょっとの事で、アソコが痛い、ココが痛いと口にするウゼー男、それが俺だ。

今日も朝、目覚めて、布団の中で手を見て、テンションが最高に落ちる。

そして「右手が痛い! 腫れてない?」としゃべり出す。

悪いか?