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俺の、最後の獄中絵日記 第66回

水温まぬ春

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!

水温まぬ春

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2013年(平成25年)3月6日

冷たぁっ!

っていうより痛い!

もう3月に入っているってのに、何だこれは。

東京で「水が冷たい」っていったって、たかが知れてるネ。

ここでは石けんで手を洗って、泡を洗い流すまで水を触っていられない。

心臓に響くのだ。

心臓に響く前に早めに水から手を離さないと、全身がしびれて数秒間は動けない。

お湯を使ってのんびり顔を洗えるシャバが何と贅沢なのかわかる。

ここは部屋もあたたかく、外へ出たりすることがないから、寒さを感じることがない。

だから錯覚するんだよ。

外の、マイナス10度を通ってきた水に触れた時、真実に気付かされるんだ。

今は冬で、しかもここは北海道なんだって。