〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、北海道の月形刑務所で服役中。関東で生まれ育った武二郎にとって、真冬の北海道は目新しいものばかりだった!
えぐり込むように
2013年(平成25年)2月5日
北の刑務所は積雪のために、1年の半分は屋外での運動ができない。
ここ月形刑務所も、そのうちのひとつだろう。
だから貴重な運動時間のほとんどを工場内で済ますことになった。
ボールを追ったり、走ることもできない。
こうなると筋トレの時間になってしまい、効率の良いダイエットも期待できない。
ところが工場内には元ボクサーが居たのだ。
これは見逃すことはできない。
無理矢理頼み込んでボクササイズ開始だ。
全然このさえない工場内運動の時間が、一日のうちで一番貴重な時間に変わった。
さしずめ丹下段平に少年院から教えを乞うた矢吹丈の心境か......。
まずは「明日のために その1~シャブ~」からだ。
この「明日のために」というのは、健康な体で出所するために......という意味だが、
残りの期間、一生懸命やれば、必ず得るものは有るはず。
良くも悪くも、心がけと工夫次第ということだね。