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俺の、最後の獄中絵日記 第23回

沈黙は金

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


沈黙は金


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2012年(平成24年)12月☓日

現在、新入訓練の雑居房。

懲役ってサ、おもしろいもので、一度口にしてしまったら、出るまで引っ込めらンない事ってあるんだよナ。


よく、新入がメシの時、「私、甘いもの、あまり好きじゃないので」なんて言ってしまったばかりに、出所するまで甘いものは全部取られ続けた、なんて話はたくさんあるんだぜ。

なのに、今回、やっちまったよ!

俺は将棋、囲碁、オセロ等、人とサシでやるゲームが大嫌いだ。

だけど、やり方くらいは知ってる。

部屋の親方は、大の将棋好きのようだ。

工場での昼休みも、誰か相手を探して、やってる。

俺はいつも「将棋できるか?」ってきかれると、「いいえ、まったく」と答えるようにしているのだが、

その時はタイミング悪く、あまりにもヒマすぎたんだ。

親方の「ゴッチン(=俺のことネ)が将棋できたらなァ」という問いかけに、「動かし方くらいはわかりますよ」なんて言ってしまった。

ああ、これが大きな大きな失敗だったよ。

親方は、手応えあろうとなかろうと関係ないんだネ。

将棋のコマをいじっていたら、それでいいようだ。

ここから、朝から晩まで将棋の相手という地獄の日々がはじまってしまうのだ。

配役になって※1、この雑居房を出る事になったときは、心底ホッとしたナ。

やっぱり、口は災いのもとだよ!


※1......工場に配属になること。この場合は、新入訓練工場から一般工場に配属が変わった、ということ