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俺の、最後の獄中絵日記 第21回

オヤジ、アウト

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


オヤジ、アウト


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2012年(平成24年)12月11日

一夜明けて今日は工場へ出役だ。

「昨日来た者は一番前に座れッ!」と、マニュアルを見せながら、オヤジがここでのルールをまくしたてる。

ここは新入訓練工場。

工場に降りるまでは、オヤジも特に厳しく教育しなくてはならない。

だからニコリともしない。

昨日来た俺たち新入3人に作業服が割り当てられたのはいいが、なぜか俺のズボンの裾の長さが左右で違うんだ。

こんなことあンのかよ!

さっそくツイテネーと思っていると、願い事でオヤジが回ってくる。

余計な事言って一刀両断されているのも居る中で、遂に俺の番に。

「用件ッ!」と言われ、「作業服が......」と俺が口ごもっていると、「修理、交換、どっちだッ!」

早口の上に、よほど気が早いのか、俺の言葉にかぶせてくる。

「交換をお願い......」「大きいのか小さいのかどっちだッ!」

何百人、何千人と相手にしているので、質問も同じようなものが多くて、慣れているんだろうね、ポンポン来る。

しかも無表情のまま......

「い、いえ、ズボンの裾が......」「長いのか? 短い分には交換せんぞッ!」

と、要は支障がないのならそのまま穿いておけ、という無言の圧力。

「いえ、裾の長さが違うんですよ」と言うと、これまでにはないパターンだったんだろうネ、

「......プッ」と吹き出した顔を隠しながら、次の人のところへ行ってしまった。

黒覆面に尻を叩かれなくてよかったね、オヤジ。