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俺の、最後の獄中絵日記 第20回

空から下界を眺めれば

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〈前回までのあらすじ〉
2012年10月、覚醒剤の譲渡や使用などで懲役二年四月の刑をくらった後藤武二郎は、住み慣れた?小田原拘置所から、北海道は月形刑務所へ移送されてしまう。ここ月形では、どんな出来事が武二郎を待っているのか? 待望の刑務所編スタート!


空から下界を眺めれば


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2012年(平成24年)12月10日

てっきり小田原拘置所に移送されて掃夫をやるものとばかり思っていたけれど、荷物をまとめて集った3人が言い渡された移送先は月形刑務所だった。

刑務所へ移送される以上は、一般工場へ降りる事になるだろうから、当初の予定よりは仮釈はぐっと少なくなる※1

とは言え、府中、横浜にオチるよりは、北海道は未知の可能性を含んでいるから、あきらめたわけじゃないぜ。

朝メシを喰ったあと、3人は車で羽田空港へ。

なんと手錠をして荷物を持ち、3人ロープでつながって、一般ロビーを歩かされたのには本当に参ったよ。

そして十数年ぶりに乗った飛行機。

機体が離陸して、ぐっと持ち上げられると、あっという間に空の上だ。

パソコンの中のグーグルアースで観ていた空からの映像を今、リアルに現実のものとして眺めている。

懲役に行く時っていうのはサ、シャバに色々と思い残した事があるものだ。

親の事、女の事、心配事もあれば口惜しい事も。

俺も心の中に『チクショウ、あの野郎』なんて思いがあったよ。

でもさ、この空からの景色を見てるとサ、どんな街にも車が多く走っていて、家がたくさんあって、その一つひとつに家族があって、きっとドラマもあるんだろうな、と思った。

少し離れた広い視野で見下ろしたらサ、それに比べたら俺の怒りなんて本当にちっぽけなものだなって気がしてきて、不思議と心が楽になったよ。

この心を失わず、大きな器を自分のものにして、帰りにもう一度この風景を眺めたいものだ。

俺の言ってる事、伝わるかネ?


※1......工場で労役をしているとケンカなどに巻き込まれて懲罰の対象になりやすく、一般的に仮釈放がもらえにくいと言われている