〈前回までのあらすじ〉
小田原拘置支所にアカオチしたい武二郎に、横浜刑務所への移送の命令がくだる。これから14日間、この横浜刑務所で考査という名のさまざまな訓練やテストを受け、最終的にどこの刑務所に送られるか決定するのだ。はたして武二郎は再び小田原に帰ってこれるのか!?
小姑よりヒデエ
2012年(平成24年)11月2日
今日、小田原の拘置支所から横浜刑務所に移送になった。
どこの刑務所に送られるかが、ここで決められ、ここから刑務所へ移送される。
いわゆる"考査"と呼ばれている訓練期間が始まる。
小田原からは、俺ひとりマイクロバスで来た。
他は、およそ九割方が横浜の不良※1だ。
横浜刑務所にはそうでなくとも地元の不良が多すぎるので、ここで考査を受ける人間は横浜におろさず、北海道などに送ることが多いらしい。
横浜を長期刑務所にするというのも手伝って、ここから横浜にオチる人は少ないようだ。
助かったよ。
だって、ここは大変だ。
何が大変かって?
そうだナ、まずひとつに点検がすんなり終わらない。
だって朝の点検で回ってきた刑務官が、点呼を取ったあともジーっとこっちを見たまま、
『一番座布団のたたみ直し! 二番タオルちゃんと掛けろ! 三番パジャマの置く位置が違う! 四番もう少し横へ座れ! 五番手は足の付け根だ! 六番もっと大きい声出せ!』
と、全舎房でこんな感じなんだぜ。
よく気がつくものだと逆に感心するよ。
※1 不良......ヤクザのこと