(前回まで)
親を甘く見、男を甘く見、自由気ままに家出を楽しむ。男の家に寝泊まりし、家出をプチ旅行と楽しむ姿は、こちらが見ていてハラハラするほどだが、当の本人はどう感じているのだろうか?
全部計算した上で行動している
──家を出るときに不安はなかった?
夏海●昔に家出未遂したときはあったけど、今回は親にキレててそれどころじゃなかったから。まあ実際やってみたら、どうってことなかったし。
──実績を作った、と。むしろ親の方が今、不安だらけだろうね。厳しかった親がこれで変わるかもね。
夏海●そうそう! 家に帰ったら豪華なゴハンが出て来そう(笑)。
──家へはいつ帰る?
夏海●あと4~5日くらいで。
──帰ってもいいと思えた理由は?
夏海●しょせん帰るしかないし、宿題も残ってるし......。それに、もともと登校日には帰るつもりだったし。本当は登校日までに宿題ぜんぶ終わらせて、登校日の後から夏休みの最後まで家出しようと思ってたんですよ。お盆にはお小遣いも入るし。
──計画家出だ。
夏海●だけど怒られたから、それでキレて「もういいや」って。
──予定を前倒しにした、と。
夏海●今年の夏は、絶対に家出するって決めてたんですよ。今まで「やる、やる」って言っててできなかったんで。
──突発的じゃないんだ。
夏海●ふふふふ(笑)。
◆◆◆◆◆ 家出事件簿・その5 ◆◆◆◆◆
派遣型風俗店の経営(42歳)が、同店の店長(31歳)と共謀し、家出中の女子中学生2人(いずれも14歳)を雇い入れ、大阪市内のホテルに派遣。男性客相手に猥褻な行為をさせていた。
──しかも親も完全に制御されたという。
夏海●親はもうどうでもいい。これでキレまくってケータイ取り上げられても、それはそれで。だから帰る前にケータイのメモリーは全部メモっておくつもりだし。それでケータイがなければ、次に家出したときに見つけられないだろうし。
──困るのは親自身だろ、と。
夏海●今も親は、居場所までは知らないんで。
──東京にいることは知ってる?
夏海●ううん、知らない。でも、もしかしたら......。ケータイって、かけると居場所がわかるって友達に聞いたんですよ。
──発信場所がね。
夏海●だから最初は電話しなかったんですよ。かけるにしても、例えば大宮にいても電話するときだけ渋谷に行ったりとか、遠くに行ってからかけようとか思ってて。メールで親が迎えに来るつもりがないってわかったから、電話してもいいかなって、かけるようになったんですよ。
──ただ意地で電話に出なかったんじゃなくて、それも戦略だったんだ?
夏海●そう。
──ほー。
夏海●一応、ある程度考えてるんですよ。警察に言われても、まったく連絡しなかったら大変だけど、メールしとけば事件じゃないから警察も動かないかな、とか。家出なんて夏になればいっぱいあるから大丈夫かなって。
──知能犯だ。
夏海●ふふふふふふ(笑)
もちろん、たまたま運がよかっただけかも知れないし、今頃は犯罪に巻き込まれている可能性だってある。犯罪とまではいかなくても、「いい人」という男友達や先輩が、今頃豹変している可能性もある......というか、かなり高い。最初はいい人を演じ、心を開いた頃を見計らって、ついでにお股を開かせるのはある種の男の常套手段である。そうして餌食になった似たような少女を、筆者は以前取材している(拙著『アウトローたちの履歴書』に収録)。
夏海ちゃんは、どうなのだろうか?彼女のその賢明さでトラブルを切り抜けて、楽しい日々を過ごしていることを、今はただ願うだけである。
(取材/文=石原行雄)
石原行雄 プロフィール
闇フーゾクや麻薬密造現場から、北朝鮮やイラクまで、国内外数々のヤバい現場に潜入取材を敢行。著書に『ヤバい現場に取材に行ってきた!』、『アウトローたちの履歴書』、『客には絶対聞かせられない キャバクラ経営者のぶっちゃけ話』など。
http://www008.upp.so-net.ne.jp/ishihara-yukio/

いざとなれば靴下売るしィ、と少女は笑った。