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新橋襲撃事件の真相

差別主義者と警察が馴れ合うヘイトスピーチ街宣 新橋襲撃事件の真相

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 2018年7月16日。私は新橋駅SL広場に向かっていた。理由は、タイトルは拉致被害者奪還を掲げているが、人種差別団体がヘイトスピーチ(差別扇動表現)を撒き散らす街頭演説会をおこなうという情報を聞いたからだ。私は長らく、人種差別団体にカウンターと呼ばれる抗議行動を展開してきたが、ヘイトスピーチの飛び交う現場に行くのは久しぶりだった。
 理由としては、自分の役目はもう終えたと思っていたからだ。2016年6月からヘイトスピーチ(差別扇動表現)を違法とする『ヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)』が施行。ヘイトスピーチ解消法は罰則規定が無い理念法であり、抑止力を疑問視する声も多いが、人種差別団体は衰退し下火になっていった。現在は、各自治体でヘイトスピーチを対策する条例の制定が進んでいる状態だ。
 日本がヘイトスピーチを許さない社会に変化をする中で、私みたいな人間がカウンターにいることはマイナスになるだろう。私はお世辞にも喜ばれた経歴の人間ではない。今は真面目に生きているつもりだが、世間からは反社会勢力と見られている。私がカウンターの最前線にいた昔とは違う。どこかで差別デモ、街宣が起これば、大勢のカウンターの人々が集まる。私は自分の存在がカウンターにおいて必要なくなったと感じ、消え去った方が良いと考え身を退いていたのだ。
 そう思っていた私が、どうして新橋に行こうとしたのか。なぜかといえば最近、人種差別団体の差別デモ、街宣に抗議をしているカウンターに対して、暴力を振るう既存右翼団体の人間がいると相談されたからだ。それは本当で、右翼団体構成員がカウンターへの暴力行為により逮捕をされ、有罪判決を受けた例まである。私は心配で、新橋に足を運ばずにはいられなかったのだ。
 私がSL広場に着くと、人種差別団体が街頭演説をしていた。私は近くにいた街宣参加者の差別主義者に近付く。私の顔を見て、差別主義者は酷く動揺した表情をする。その差別主義者は以前、私が参加をしていた朝鮮学校無償化除外反対のデモに抗議を仕掛けてきた人物だった。私に向けて拡声器を使用し、名指しで批判の演説をおこなっていた。
 丁度良い。私は差別主義者に、朝鮮学校の子供たちを巻き込むなということ、拉致問題をダシにしてヘイトスピーチをする愚かさ、拉致被害者一括帰国論でなく段階を踏んだ現実的な交渉をしていくべきではないかと話した。会話をするにつれて差別主義者は興奮し始め、日朝間の様々な懸案を進展させるために朝鮮民主主義人民共和国に訪問した私のことをスパイだと決め付け、喧嘩腰となり大きな声で叫び出した。
 大勢の警察が慌てて間に入る。だがなぜか、逆上した差別主義者ではなく、冷静な私が現場から引き剥がされる。すると、いきなり右翼団体風の隊服を着た男から突進された。私の上半身に衝撃と痛みが奔る。警察が止めに入る。私にタックルを喰らわせたガタイのいい男は、見るからに獰猛そうな形相をしている。再び男は私に襲い掛かってくる。私は暴力を振るわれながらも反撃をしなかった。
「おい、お前、今殴っただろ?」
 すぐに私は暴力を振るってきた男に問う。
「殴ったよ! もっと殴ってやる!」
 馬鹿なのだろうか。男は堂々と言い放った。しかし、警察の目の前で事件が起き、男が暴行を認めているのにも関わらず、現行犯逮捕をされないでいる。おまけに、殴ってやるは脅迫だ。どうして捕まえない。
「あいつ捕まえろ!」
 私は周囲の警察に訴えても、聞こえない振りをしている。ふざけている。
「落ち着いて、落ち着いて」
 警察は意味不明な発言をしながら、私を新橋駅構内に排除をする。私は取り押さえられた宇宙人のように運ばれた。
「触るな! 離せ!」
「トラブルになるよ。危ないから帰った方が良いよ」
 一体、何を考えているんだ。私は一方的に襲撃された側である。
「なぜ相手が認めているのに、捕まえないんだ?」
 私が警察に聞くと、驚くべきことに返事をしない。とんでもない対応である。このままではいけない。私は警察に掴まれた腕を振り払う。そして、進路を妨害する警察の壁をくぐり抜けた。再度、私は新橋駅SL広場前に戻った。
 次の瞬間、何人もの差別主義者たちが私に襲い掛かってくる。警察がブロックをする。その中には、先ほど、私に突進をしてきた男もいた。
「山口!」
 私の名前を言いながら、手を伸ばしてきた。しかし警察が間に入り、攻撃は私には届かなかった。男は私のことを知っているようだ。こいつは誰なんだ。
「お前の名前は何だ!」
 私が訪ねる。だが、男は名乗ろうとしない。
「バックがいるからって調子にのるなよ!」
 よく分からないことを吠えている。私には不良の世界でいうケツモチなどは付いていない。何か勘違いをしているようだ。
「お前、さっき俺を殴ったよな?」
 沢山の警察が取り囲む中で、私は男に尋ねた。
「ああ! お前を殴って蹴ったがそれがどうした!」
 男は大声でそう答えた。間違いなく、多くの警察に聞こえているはずだ。それなのにも関わらず、警察は犯行を自白している男を捕まえようとはしない。
「お前、俺を狙って日本が良くなると思ってるのか?」
 私は男に投げかけた。狙われる謂われなど私にはない。
「そうだ! お前を排除するのが愛国だ!」
 男は自らの愛国を叫んだ。どうしてなのだろうか。私を殴っても、日本は良くならない。私が日本を悪くする売国奴だと本当に思っているのか。
「朝鮮人!」
 周囲の差別主義者たちから、私はヘイトスピーチが浴びせられる。クソッタレ。右翼とは、差別をする者たちと、身体を張って闘う存在ではなかったのか。少なくとも、私はそう信じて行動してきた。だが、私に暴力を振るった右翼団体風の隊服の男は、差別主義者のボディーガードのようなことをしている。いつから右翼はこれ程まで情けなくなったのか。
 その後も、私は男から終始、狙われ、罵倒された。私はひたすら屈辱に耐えた。やり返してしまったら、警察は私を逮捕するか、お互い様だとして暴力事件を揉み消すだろう。それではいけない。もし、被害者が私でなくマイノリティの在日コリアンだったら、どうする。私はきちんと男から突進された件を、事件化しなくてはならないと考えた。
 結局、差別主義者と警察が馴れ合いながら、ヘイトスピーチ街宣は終わった。私はすぐ、被害届を出すために最寄の愛宕警察署に向かった。それは私の身を守るためでもあった。私は過去に人種差別団体から暴力を受けた際、手を出していないのにも関わらず、被害を受けたと捏造されたことがあったからだ。突進された挙句に、嘘の被害届で捕まったんじゃ救われない。
 愛宕警察署に入り、受付に事情を話す。
「担当の者が来るまで少々お待ちください」
 私はしばらく待たされた。待っている時間に、現場でのことを思い出す。はらわたが煮えくり返る。本当にありえない警察の対応だった。
「お待たせしました」
 担当の者たちが迎えにきた。やっと被害届を出せると思いきや、私は呆然とした。さっきまで一緒にいた、私が目の前で暴行を受け、犯人の男が自供しているのに逮捕をしなかった警察たちではないか。事情聴取をおこなう狭い無機質な部屋に案内された。椅子に座り、警察たちと向かい合う。
「どうして、現行犯逮捕をしなかったんだ?」
「えっ、知りませんよ。事実関係をきちんと確かめるまで被害届を出せません」
「被害届は出せるはずだ」
 警察たちは私を馬鹿にした様子でとぼける。その余りにも醜悪なニヤついた表情を見て、怒りがこみ上げた。
「お前、犯人が殴ったことを認めた時いたよな?」
「いませんでしたよ」
「嘘をつくな。被害届を出す」
「事実関係をはっきりさせるまでは、被害届を出せません」
 警察たちは被害届の受け取りを拒んだ。私は従わなかった。被害届が出せないはずはないからだ。こうした暴力事件のよくあるパターンは、被害届を受け取ってから捜査となり事実関係を調べていく。単に、事件化するのをまぬがれたい魂胆だろう。心底、腐っている。
 ここで諦める私ではない。最終的に、警察の上層部に私の話が通り、被害届を出すことが認められた。上層部が被害届を受け取ると言った途端、対応が一転したのだ。酷すぎやしないか。これが日本の現実である。
 今後、警察がどう動くかを注視したい。そして、私はすでに男の身元を特定することに成功した。人種差別団体に加担する似非右翼は、断じて許さないつもりだ。

山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro