>  > 義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第九回 (下)
第九回 しばき隊のトップは誰だったのか? (下)  

義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第九回 (下)

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第九回 しばき隊のトップは誰だったのか? (下)
 
 人種差別団体『在日特権を許さない市民の会(在特会)』がヘイトスピーチ(差別扇動表現)をおこなうデモをすれば、何処ともなしに現れ直接対峙をする『しばき隊』。人間社会が許してはならない「差別」に立ち向かう正義の集団であったのにも関わらず、世間からは数々の暴力事件をおこない逮捕沙汰まで引き起こす反社会勢力のように見られていく。
 そうしてネットを中心に、しばき隊の内情は真相とは大きくかけ離れて荒唐無稽な都市伝説のように広がっていった。挙句の果てには公平公正なスタンスで的確な情報を流さなければいけないはずのメディアまでもが、好き勝手な想像から出鱈目を発信していたのが実際である。なので、しばき隊の内実は間違って伝わることばかりで、誰が指導的立場にあったかも知られていない。
 私は今回、秘密のベールに包まれていた、しばき隊のトップが誰だったかを書こうと思う。
 
※編集部注......しばき隊とは、差別主義者にカウンターと呼ばれる抗議行動をする『レイシストをしばき隊(2013年解散)』、『男組』、『C.R.A.C.(クラック)』、『OoA(オーオーエイ)』、『憂国我道会』などのいくつかのグループ、そしてどこの集団にも属さないでいる人々の総称である。

 ある時、私は韓国旅行で飲み過ぎてしまい記憶があやふやなのだが、塩を大量に食べ、車道を全力疾走し、怒られて歯が無くなっていた。また、その後日に高層レストランで赤ワインを飲んでいて、なぜか帰りの飛行機に乗らないとその男が言い出したこともある。私がいくら飛行機の時間を伝えても、
「帰らないぜベイベー!!」
「まだまだ飲むぜベイベー!!」
 と返されてしまい、帰ろうとしてくれないのだ。結果的に、飛行機代は水の泡と消え、新たにホテルを予約して帰国は先送りとなる。仕事の予定も狂ってしまい、破滅へ向かってゴーである。
 また、酔っ払っていた時に予約して頂いたサイパン旅行では、私が成田空港でアメリカ側の措置により出国拒否の憂き目に合ってしまい、多大なご迷惑をお掛けてしまった。飛行機代、ホテル代など全て泡となり消えてしまったはずだ。私は申し訳ないので頭を下げて謝った。
「全然、平気。気にしないで」
 そうしたハプニングが起きても、その男はむしろ面白がってくれた。旅行代が吹っ飛んでしまったのにである。損得勘定を超越した人物なのだ。
 こうした逸話を話せば、山口祐二郎がエピソードを大げさに盛っているだろうと言われる。とんでもない。全て実話だ。そして何よりも、どうしてそこまでエキセントリックな飲み方をするのかを問われたことが山程ある。傍からすれば私がパワハラ、アルハラされているみたいに見えてしまうようだが、私としては一緒に飲めて喜んでいるのだ。なぜかといえば、その男を本当に尊敬しているからだ。
 私と違い、その男は金も名誉も得ているのにも関わらずカウンターをしている。私は人生ヤケクソになり、右翼になった。そして、長らく右翼業界にいて在特会を見過ごしてきた。右翼業界のしがらみもあったが、差別に立ち向かうのが恐かったからだ。カウンターをしていて何度も辞めようと考えたこともある。防衛省に短刀を持って侵入し火炎瓶を投げて爆発させた私ですらそうだったのだ。
 差別を見て見ぬ振りをして逃げ出したい私を、その男の言葉が奮い立たせた。
「当たり前に責任を果たす大人が増えれば、あんな醜悪な差別デモはなくなるんだ」
 私が勇気を貰ったその男の名前は、伊藤大介氏だ。
 私はしばき隊で一緒にカウンターをするようになり、伊藤大介氏の行動力には驚かされた。路上の最前線に立ち、最高級のベンツを乗り回しながら差別デモ隊に抗議をしていく。さらには差別デモの参加者である高橋直輝氏を説得してカウンター側に転向をさせた。その後、高橋直輝氏は武闘派反差別集団『男組』を結成し、しばき隊の中心的人物となる。伊藤大介氏は比類なき結果を出していき、しばき隊の中でひときわ目立つ存在になっていった。
 戦闘力、経済力、人間力を持ち合わせる器量の優れてた伊藤大介氏を、差別主義者たちが憎まないでいるはずはなかった。だがそこは、ヘイトスピーチを撒き散らしマイノリティを傷つける、醜悪な差別主義者たちである。現実で対峙をぜずに、差別主義者たちは表に姿を現さない卑怯なやり方で攻撃をした。
 ネット上で伊藤大介氏に対する誹謗中傷は溢れていき、やがて被害は実生活に及ぶようになる。会社にいたずら電話をかけられ、嫌がらせのFAXを送られるまでになった。
 しかし、伊藤大介氏は一歩も退かなかった。カウンターをすることで降りかかってくる火の粉を、その男は我が身を省みずに浴びる道を選んだのだ。今まで以上に激しくカウンターをおこない、陰湿な差別主義者たちに対しては訴訟まで起こしていく。この選択については、伊藤大介氏自身の強さが無論あるだろうが、理由はそれだけではないはずだ。私が想像するに、伊藤大介氏は自分が退くことによってカウンター全体に影響を与えてしまう可能性も考えていたのだ。
 しょっちゅう、カウンターで最前線に立っている伊藤大介氏は、警察沙汰になるリスクを負っていた。また、伊藤大介氏はしばき隊の中で逮捕者が出ると一早くフォローに動き、何かトラブルが起これば解決するために東奔西走した。カウンターををする過程で方向性を決める際、伊藤大介氏に意見を求める者は多かった。伊藤大介氏がいれば安心だという空気がしばき隊の中にできていく。そうして、伊藤大介氏はひとりでにまとめ役的な立場になっていった。
 しばき隊の中で、伊藤大介氏のことを尊敬していない人間など思い当たらない。しばき隊のトップは伊藤大介氏だったのだ。  

山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro