>  > 義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第七回 (下)
義賊か、それとも悪党か。 “しばき隊”とは何だったのか? シリーズ“しばき隊の真実” 第七回 (下)

義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実" 第七回 (下)

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義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか?
シリーズ"しばき隊の真実" 第七回 (下)

第七回 しばき隊内部暴行事件 戦慄の野毛ベース事件 (下)

※注......しばき隊とは、在特会などの人種差別団体に対し、カウンターと呼ばれる抗議行動をする『レイシストをしばき隊(2013年9月解散)』、『男組』、『C.R.A.C.(クラック)』、『OoA(オーオーエイ)』、『憂国我道会』などのいくつかのグループ、そしてどこの集団にも属さないでいる人々の総称である。

 岩淵進氏がカウンターに包丁を突き立てる。一線を越えた。命の取り合いだけは防がなければならない。皆が一斉に取り押さえ、岩淵進氏から包丁を取り上げる。右翼は暴力的だと糾弾をする木下ちがや氏。
「腹が減った。牛丼を食べに行こう」
 清義明氏が言った。このタイミングで 意味不明だ。修羅場なのに何を考えているのか。でも驚くことに、お腹が空いていたのか真顔で高橋直輝氏と岩淵進氏が頷いた。さあ、今から牛丼だ。清義明氏、高橋直輝氏、岩淵進氏が店の外に出る。
 すると路上に出た刹那、この好機を逃さんとばかりに清義明氏の打撃の連打が放たれる。油断して隙だらけの岩淵進氏に間髪入れずに叩き込まれたのだ。北斗の拳でいうところの北斗百烈拳、聖闘斗星矢でいえばペガサス流星拳ばりの怒涛のラッシュだ。サンドバッグと化した岩淵進氏は、やがてゴミ捨て場に崩れ落ちた。その光景を眺めながら、高橋直輝氏は高笑いをした。
 岩淵進氏をノックアウトすると、清義明氏と高橋直輝氏は心置きなく牛丼屋に向かい入店し、仲良く談笑をしながら食事を平らげたのだという。そして腹ごしらえを終えた清義明氏と高橋直輝氏は、木下ちがや氏、Y氏、A氏が残って飲んでいる店に満面の笑顔で戻ってきた。誰かをボコボコにした後に平然と牛丼を味わえる精神構造を、猟奇的と感じてしまうのは私だけだろうか。この世の地獄である。
 高橋直輝氏が帰ってきたことにより再度、臨戦態勢となる木下ちがや氏。高橋直輝氏を挑発し罵声を浴びせかける。もういい加減にしろ。堪忍袋の緒が切れたY氏が、木下ちがや氏に激怒。店の近くの駐車場に連れ出し、何度も蹴り飛ばしながら説教をする。反省をした木下ちがや氏は、店に戻ると床で熟睡する高橋直輝氏を揺すりながら大声で何度も謝罪をし、雄叫びを上げた。野毛にその懺悔の叫び声が響き渡ると共に、深夜の血で血を洗う争いは終わったのだ。こうして、惨憺たる野毛ベース事件に幕が降ろされた。 
 翌日、私の携帯に岩淵進から連絡が入る。全身が強烈な痛みに襲われていることを話され、金もないのにタクシーで自宅まで逃げ帰ったようだった。清義明氏にボコボコにされたのは。気の毒であるし可哀想だ。しかしながら、店を壊し、刃物まで持ち出したのだから自業自得だろう。私は呆れてしまい、同情する気持ちも起きなかった。酒に呑まれてしまった岩淵進氏を咎め、私は電話を切った。後日、清義明氏と岩淵進氏の話し合いがおこなわれ、双方が納得をし円満な解決に至った。そして同日には、高橋直輝氏、木下ちがや氏、Y氏、A氏を含む全ての野毛ベース事件当事者たちが和解をしたらしい。
 これが野毛ベース事件の全容である。正気の沙汰ではないと感じる方もいるだろうが、このようにしばき隊内部では容赦ない暴行事件は度々起こり、殺してしまう寸前までいったケースもあった。それなりに強い影響力を持っていた私でさえも、理不尽に殴られて被害を受けたことがある。一歩間違えば、死人が出てしまっていた可能性も否めない。
 暴力と隣り合わせであったのが、紛れもないしばき隊の一側面だった。当然であるがしばき隊の荒くれ者たちが集まればトラブルが勃発することを回避できるわけがなかったのだ。酒が入れば、尚更なはずだ。
 ではなぜ、ここまで暴力を実行し、警察が介入する事件になっていないのか。どうしてかというと、しばき隊内部で暴行事件が起きれば、仲間内の暴力沙汰なので内々で解決し、個々人の問題だとして終結させ、警察沙汰にせずに表に出さないできたからだ。つまり、誰もがしばき隊内部で暴力事件が起きてもヘゲモニー(運動の主導的地位)闘争に利用しなかったということだ。
 その方が私は良いと思ってきたが、それが正しかったかは分からない。もし、そのことがしばき隊による組織的な暴力事件の隠蔽だと言われれば、私は隠匿行為をした悪人になってしまうのだろう。
 そうした理由から今般、私は本当に葛藤し悩み苦しんだ上で、野毛ベース事件を公開することを決意した。が、さりとて、まだ私は偽善者である。と言うのは、この他にもしばき隊内部の暴行事件で私が墓場まで持っていくものがいくつも存在するからだ。
 そうであれば、私は人々が忌み嫌うおどろおどろしい暴力の中にいて、差別に抗ってきたことを免罪符にしていただけなのかもしれない。私は差別主義者にダメージを与えられれば、それでも構わなかった悪人である。


山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro