>  > 義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実"
桜井誠を捕まえた男 清義明氏インタビュー (下)

義賊か、それとも悪党か。 "しばき隊"とは何だったのか? シリーズ"しばき隊の真実"

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桜井誠を捕まえた男 清義明氏インタビュー (下)

──お話を聞いていて、清さんはセクト化についてとても嫌悪があるように感じます。清さんはカウンター集団だと、レイシストをしばき隊には賛同していましたが、C.R.A.C.にもセクト化したと否定的なスタンスで自主脱退もしていますよね。そして僕も同じく、C.R.A.C.からは自主脱退しているので興味があります。そこら辺の理由を教えてください。

清 C.R.A.C.を辞めたのは、秘密保護法に反対する行動をやり始めたからだね。だって、反差別と関係ないじゃん。安保法制もそう。

──同感です。ただ結構、層が被っているのが事実なんですよね。反原発もカウンターも秘密保護法反対も安保法制も取り組んでいたりするのはありますね。

清 それだと今までの新左翼や80年代から避けてきたはずのダサイ戦後左翼と同じ。しばき隊はレイシストをしばいてやるってだけの集団だった。反差別という1つの目的で集まったグループだったはずなのに、C.R.A.C.はセクト化した凡庸な戦後左翼になってしまった。そんな分かりやすいセクトに自分はいたくないよ。何の相談も野間さんからされなかったし。それにC.R.A.C.は大衆受けを狙うクリーン路線に転じたけれど、成功するはずがないよ。今までレイシスト死ねとか言っていた奴らなんだから、無理に決まっているよ。そうしてC.R.A.C.は外形標準的な戦後左翼の路線を、無理筋なのに辿っていくようになってしまった。その分かりやすい面が、現在取り組んでいる沖縄の米軍基地問題だと思うよ。

──私も10年程、米軍基地問題に取り組んでいます。そこを細かく教えて頂けたら幸いです。

清 俺は米軍基地のある街で生まれ育った。だから米軍基地反対のデモも良く見てきた。そのデモに出ている人間で地元の奴はほとんどいなかった。大体が、地元じゃない他の場所から来ている政治運動をしている奴らで、日曜日になるとヤンキーゴーホームとか叫びながらデモをする。俺からすれば悪いことをする人間は、日本人も米軍も一緒。周りに米軍の友人や知人も沢山いる。そんな中で、米軍基地いらないとか米兵帰れとか言えない。それだから、C.R.A.C.や男組が沖縄の外からやってきて米軍基地問題にコミットして良い結果になるとは、残念だけどとても思えない。

──私は日本の米軍基地・施設は世界的に見ても異常な数なので、縮小していくべきだと思いますが、ヤンキーゴーホームと叫ぶことには反対ですね。アメリカ人というだけで一括りに差別するヘイトスピーチだと考えているからです。しかし、ヘイトスピーチはマジョリティからマイノリティにおこなわれるもので、それは数の問題ではなく権力性の違いがあるとの考えのもと、日本国民が占領軍である米軍にヤンキーゴーホームと言うのはヘイトスピーチではないとの認識を持つ人は結構います。私もカウンターをしていて、そういう認識をされている方々が沢山いることに驚いています。

清 確かに米軍基地には騒音や米兵の犯罪などで色々な事情があるけれど、余りにも地元の事情を知らないし考えていないと思うよ。俺からすれば米軍出ていけも言えないね。歌舞伎町の治安が悪くなったから外国人出ていけ、とやるのと同じですよ。地元に密着して生活している軍属や、米兵の子供もいる。子供の頃から片親が米兵のハーフの子と遊んできた。ヤンキーゴーホームというのは、そういう自分の友人たちに帰れということだもん。

──ヘイトスピーチの判断でいえば、2016年6月に施行されたヘイトスピーチ解消法において、ヤンキーゴーホームが引っかかる可能性は大いにありますね。法規制の影響で最近では在特会も穏健路線になっています。桜井誠に至っては『日本第一党』を結成し、公職選挙法で強く守られる選挙の方に活動をシフトしてきていますね。人種差別団体の断末魔の声が聞こえてくるようです。

清 米軍基地問題は別として、ヘイトスピーチの法規制ができて、在特会が穏健路線になったことはとても良い流れだと思う。前みたいに在日コリアンに対して死ね殺せと言ったり、女子供捕まえてとかじゃなくなったのは確実にマシになってる。もちろん、在特会が訴えている在日特権とか日韓断交とかの主張にひとつとして賛成できるものはないけれど。それでも少しはマシにはなっていると思う。そうするとこれからは彼らの言論には言論で対抗しなければならない。政治は政治で対抗しなければならない。そうなったとき、政治にコミットしていくようなこと、例えばロビイングとか選挙運動とかは真面目な人たちがやっていくべきだし、そういう意味では、俺らの役目、つまりしばき隊の役目は果たしたんじゃないのかな。

──ロビイングは、しばき隊の役目ではないですか?

清 レイシストをしばくとか言っていた連中がロビイングとか無理。議員も警戒するよ。俺たちは嫌われてなんぼで覚悟の上でカウンターをやっていたはず。在特会が消えていけば、俺らも一緒に消えていけば良い。最初からそう思っていたはずだよ。これ以上、何かやりたいんだったら少なくとも態度は改めていかないとだね。やり方に限界があるということ。そもそも在特会の屋台骨を攻撃し崩したのは、京都朝鮮学校の裁判だったはず。山口くんがこの連載で書いているように、新大久保コリアンタウンの差別デモも、カウンターではなく結果的に地元の人たちが止めたんだ。元々、俺たちは嫌われもの覚悟でやってきたんだから、しばき隊が社会に認められようとしているのが間違いなんだよ。

──私が一番違和感を感じたのは、参院選や都知事選においての野党共闘でした。しばき隊は、ただ差別主義者を許さないという横の繋がりな集まりだったはずなのに、C.R.A.C.は野党共闘に反対する者を排除していくようになりました。賛同しない人間を攻撃して吊るし上げるという同調圧力が表面化していき、批判したり離れていく人たちが増えていったように思えます。安倍総理を支持で、沖縄の米軍基地に賛成だったり関心がない人でも差別に反対している方々はいるはずなのにおかしいですよね。

清 俺が酷いと思ったのは、神奈川で『民進党』議員だった金子洋一さんという人がいるんだ。この前の2016年夏におこなわれた参院選では落選してしまったのだけど、金子さんは共産党との共闘に強く反対していた。C.R.A.C.とかは、その金子さんが街宣しているところに押しかけて寄ってたかって罵声を浴びせたんだ。

──それは初めて知りました。最低ですね。別に野党共闘するしないの意見は自由なのに......。

清 共産党の連携に反対したということで、辻立ちの議員を集団で取り囲んで罵詈雑言とか、やってることが完全に間違ってる。それは在特会みたいなどうしょうもない連中を相手にやることで国会議員にやることじゃない。金子さんが野党連合に反対して、日本会議に入っているからってレイシスト扱いとかあまりにも馬鹿すぎる。そもそも金子さんはヘイトスピーチ規制法に真っ先に賛同している人なのにね。

──他の意見を認めないというのは、カルト化していますね......。

清 新大久保コリアンタウンで差別主義者を罵倒していたスタイルを、他でやるとかは違うんだよ。こんなことも分からない連中だとは思わなかった。

──相当、怒ってらっしゃいますね。意見が異なる者を罵倒して潰すというのは駄目ですね。単なる言論弾圧です。では最後に、清さんが今後のカウンターについて考えていることをお願いできたらと思います。

清 日本の排外主義は治まってはいないけれども、在特会的な活動は止まりつつある。法律もできた。しばき隊は当初の目的を果たしたはずだ。ここらでみんな新しいスタイルを考えた方が良い。俺はセクトや政治をやるつもりはない。大体、俺は元々、サッカーを観ながら酒を飲んでいる方が好きなんだ。それでも、もしまた裏のどぶ川があふれ出したのをなんとかするために汚れ役が必要になったら闘うつもりだよ。しばき隊ってそういうものだったんじゃないかな。俺は目的を見失った運動屋になるつもりはないね。

──本日は長い時間、大変貴重なお話をして頂き、ありがとうございました。

清 もう一軒行こう。

 インタビュー後、清氏の行きつけの裏路地にある怪しい中華料理屋に連れて行かれた。青島(チンタオ)ビールを呑みながら蛙(カエル)のから揚げを食べる清氏。しばき隊のあるべき姿とは、清氏の言うようにドブ川が汚かったら掃除するだけというシンプルな集団だったと思う。少なくとも、しばき隊はマジメな政治運動などをする立派な人間の集まりではなかったはずだ。しばき隊は、差別主義者に反対するだけが目的で、飲み仲間が悪い奴らを退治しに行く、そんなノリだった。いつからかおかしくなって運動のための運動をする人間が多くなってしまった。私は辛く悲しくなり複雑な想いになった。清氏が激辛の鶏肉炒めと紹興酒のボトルを追加注文する。もはや終電を逃したことは言うまでもないだろう。

山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro