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とある中高年ニートたちの物語

働き方改革以前の問題! 彼らは自業自得なのか?

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とある中高年ニートたちの物語

 平成30年5月21日。自民党、公明党、日本維新の会、希望の党は、高度プロフェッショナル制度(高プロ)などを盛り込んだ働き方改革関連法案ついて正式に合意した。与党は今週中の衆院通過を目指しているが、立憲民主党、共産党などは、高プロを「残業代ゼロ法案」と呼んで反対をし徹底抗戦する構えだ。
 だが、私はこうした状況を冷めた目で見てしまっている。日本経済はどうせ何も変わらないだろうと。
 昨年の平成29年に日本政府が推し進めたキャンペーン、毎月最終金曜日は15時までに仕事を終わりにして外食や旅行などをすることに充実した時間を作り消費を増やすという、プレミアムフライデーもそうだったが何ら経済効果を生まずに机上の空論で終わってしまっている。
 そもそも消費する金が有る者は少ないし、勤務時間が減ると仕事は終わらない、早上がりしたら給料が減額されてしまう等々、問題は一筋縄ではいかなかったのだ。
 働き方改革関連法案についても同様で、通過しても労働環境は苦しくて、給料は満足のいく額が貰えず、景気は回復しないのではないか。
 そう私が考えてしまうのは、自分の身近に働き方改革以前の人間たちが沢山いるからだ。簡単に言うと働こうとしない人間たち、ニートである。

●増加する中高年ニートたち

 日本においてニートは深刻な社会問題とされている。現在、日本のニートは60万人以上になったと政府は発表している。ニートは英語ではNEET(Not in Education,Employment or Training)で、就労、就学、職業訓練のどれもおこなっていない状態の者を指した用語だ。日本政府の定義では15歳~34歳までの無職の中から、学生をなど除き求職活動をしていない者としている。
 しかし、この日本政府発表には問題があり、政府が定義している34歳までより年齢が上の働く意思のない無職が増えているということだ。日本政府定義には当てはまらない、35歳以上の中高年のニートが増加していて、ニートの高齢化が起きているのが現実なのだ。
 ニートとは若者の問題と考えられてきたが、中高年の問題にもなってきているのだ。中高年ニートともなれば、養っている親も高齢である。老いていく親を見て、なぜ中高年ニートたちは働かないのか。心が痛まないのか。
 そんな私も仕事ができずに本当に悩んで生きてきた。なので、働かない人間たちに真面目に向き合いたいと思っている。
 今回は、長い期間を働かないでいる中高年のニートたちにインタビューをさせて頂いた。

●ケン(仮名 都内在住 35歳)の場合

──(山口)今回は取材に応じてくれ、ありがとうございます。まず、ケンさんはいつからニートになられたかを聞きたいです。

ケン 僕は高校を出てすぐですね。今年で35歳になりました。ここ、良い居酒屋ですね。というか今日、親から金を貰ってきたのですが少なくて。すいません、会計が足りるかどうか。

──大丈夫ですよ。私が出しますから。高校を卒業され、進学や就職はしなかったのですか?

ケン コンビニや工場で働いたりはしました。でもすぐに辞めてしまい続きませんでした。僕は不器用みたいで、すぐに仕事が覚えられないんです。コンビニでちょっと教わっただけでレジを任されて怒られました。あとは、工場でもミスをして怒鳴られました。それで嫌になって辞めました。

──そうですか。でも、仕事をすると最初は叱られるのがほとんどみたいですよ。少し我慢してみたらいかがですか?

ケン 僕は最初から働く意欲がなかったじゃありません。不器用だから怒られてもできないものはできません。入ってすぐなのに業務が覚えられるわけがないです。あとは、僕は昔いじめられていたんです。それがフラッシュバックしちゃって。働きながらどんどん自信を失っていきました。

──私もいじめられっ子だったので辛かったのが分かります。もう仕事は就かないのですか?

ケン 今、東大に入るために勉強をしています。もう、このコンプレックスを克服するためには人生挽回しかないんです。現在、いくら学歴社会じゃないと言っても、勉強はこの社会の成り立ちですよ。政治家や官僚など偉い人たちは良い大学を出てますよね。

──東大に入学するというと高い学費がかかりますよね。ご両親は賛成しているのですか? また、ご家庭に学費を払える経済的余裕はあるのですか?

ケン 父と母は反対しています。僕には働いて欲しいみたいです。でも、コンプレックスを克服するために東大で友達を作り、良い思い出が作りたいです。入学して卒業する感動も味わいたいです。人生って感動じゃないですか。

──気分を悪くして欲しくはないですが、東大に入るまでが大変ですし、卒業するのも極めて困難だと思います。それでもやり遂げられそうですか?

ケン 正直、自信はありません。辞めたら、親に迷惑かけるのも分かっています。悲しむだろうと。でも、自分の人生どうしたらいいかが分からないんです。

──コンプレックスなんて気にしなくていいんじゃないですかね。友達だって大学じゃなくてもできると思いますよ。今日はありがとうございました。

●タロウ(仮名 群馬県在住 51歳)の場合

──(山口)今日はお忙しい中、ありがとうございます。お話を聞かせて頂けたらと思います。よろしくお願いします。

タロウ 忙しくはないよ。よろしく。

──さっそくですが、おいくつですか?

タロウ 50歳だよ。もう、人生半分以上生きてる。

──どうしてニートになったのですか?

タロウ こんなんでも、俺は結構良い大学を出てるんだ。でも、銀行に就職してからが駄目だったね。すぐに辞めちゃって。それからいくつかアルバイトもしたけど半年も仕事が続いたことはないな。

──もう働かないのですか? 

タロウ 俺自身もいつまでも親の年金に寄生しているわけにはいかないという気持ちはあるよ。親父は死んで、母親も時間の問題だろう。確かに仕事がないわけじゃなく、介護や工場とかの求人情報は沢山ある。結局は俺が働きたくないだけだよ。

──良い職場に巡り合えれば意外と働けちゃうんじゃないですか? そういう知り合い、私の周りに結構いますよ。

タロウ 仕事をする意欲がもうないよ。ずっと働いてないけど、今でも思い出す。職場に行くと一緒に働いている人間たちが馬鹿にしたり蔑んでくるんだ。働かざる者食うべからずなんだろうけど、もう無理なんだよ。俺はクズだな。

──クズだなんて言わないでください。働かざる者食うべからずの考え方は、日本社会に深く浸透していますね。養っているお母様は大変でしょうけど、仕事ができないというのは、本当に仕事ができないのと単なる甘えとの間に微妙な線引きをすることですからね。ニートもそうでしょう。難しい問題です。私からすれば明日は我が身ですし、タロウさんのこと、クズなんて思いませんよ。

タロウ ありがとうね。友達はいないし、同窓会にも行こうとは思わないし、久々に母親以外でこんなに話をしたよ。

──こちらこそ。

●シュン(仮名 栃木県在住 40歳)の場合

──(山口)今日はよろしくお願いいたします。

シュン 大丈夫ですか? 騙そうとしていませんか?

──そんなつもりはありません。ここの喫茶店代も私が払うので安心してください。少しお話をして頂ければ。顔も名前も出しませんし大丈夫です。

シュン そんなことをして得ありますか?

──私も昔、似たようなもんなので。興味あるんです。

シュン 良い人ですね。でも、自分は単なるニートじゃありません。パソコン凄い得意ですから。10分間にタイピング2000文字打てますよ。

──おおっ。パソコンの専門学校とかに行かれてたのですか?

シュン そうです。卒業もしました。だから、タイピングだけじゃなく、パソコンは詳しいです。今もオンラインゲームで大人気ですし、FXで買ったこともあります。

──あれ、FXで稼いでいるのですか?

シュン いえ、父親のパソコンで勝手にやったので、今はできていません。自分はお金ないですから。

──そうですか。全然、話題が変わってしまうのですが、普段は何をされていますか?

シュン さっき言ったゲームと、あとは歌ですね。

──歌? カラオケとかですか?

シュン 違います。小学校の前で歌ったり、街を歩いている子供たちの前で歌ったりです。自分の縄張りがあるんです。縄張りが。

──失礼ながら、不審者扱いされませんか?

シュン 子供たちは素直です。喜んでますよ。集まってきます。警察が来ても、歌を聴いています。

──働かないのですか?

シュン 自分の歌は凄いですよ。5つの領域を使いこなしますから。言葉に感情を乗せるんです。ほら、聴いてください。

──ここじゃ店に迷惑ですから。

※この後、シュンが喫茶店で踊りながら歌い出し、取材が強制終了。

●取材を終えて
 
 インタビューを見て、読者の皆様がどう思うかは自由である。たぶん、甘えているんじゃねえと憤る方々は少なくないはずだ。だが、彼らは当初は仕事をする気があったのだが、躓いてしまいニートになってしまった。私は彼らと接していて、あえて親に寄生するような悪い人間ではないと感じた。つまり、彼らが問題ではなく、彼らが仕事をしたくてもできなくなってしまった日本社会に原因があるのではないか。
 日本政府が働き方改革以前に、中高年ニートと向き合わなければ日本経済の回復はないと私は考える。それをやらなくては、おそらく今後も彼らが働くことはないだろう。仕事ができないのと、甘えとの境界線は、ずっと白黒はっきりすることはないはずだ。永遠のグレーである。
 白と黒で判別するのではなく、曖昧な存在であるグレーを受け入れることが、あるべき日本社会の姿ではないだろうか。

山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。
山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro