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リアルトライアスロン

塀のない刑務所から脱走、理由はストレスからかー 解説 沖田臥竜

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毎日新聞 5月3日

 愛媛県今治市の松山刑務所大井造船作業場から逃走したとして単純逃走容疑で逮捕された平尾龍磨容疑者(27)が、逃走直前に刑務官に叱責され、落ち込んだ様子を見せていたことが、刑務所関係者への取材で分かった。事件を巡っては「刑務官や他の受刑者との人間関係に悩んでいた」という趣旨のメモが潜伏先から見つかっており、愛媛県警は、刑務所内での人間関係がストレスになり、逃亡につながったとみて調べを進めている。
 松山刑務所によると、平尾容疑者は九州を中心とした窃盗などの罪で2015年3月から服役し、同6月に松山刑務所に移送された。模範的な受刑者として、開放的な処遇で社会復帰と職業訓練に取り組む同作業場に昨年12月に収容された。


リアルトライアスロン

良い身分である。善良なシャバの人々が聞けば、「懲役のクセに脱獄した理由がストレスとは何事じゃ!」とご立腹されかねないほどの理由である。
だけど平尾くんは、ストレスを感じてしまったと言っているのだ。致し方あるまい。野生児と見せかけて、平尾くんは内心デリケートにできていたということだろう。

だが、平尾くんをフォローする訳ではないが、懲役というもの平尾くんに限らずどこかで必ずストレスを抱えて暮らしているのは事実なのである。
大抵の場合、そのストレスから慢性の便秘になってしまうのだが、それも罪の償いのうちと言われてしまえば、身もふたもなく仰る通りである。
実際、悪事を働いて獄へと放り込まれているのだ。せめてストレスくらいは抱えておかねば、シャバの人たちに申し訳が立たないではないか。
だが、平尾くんは逃げてしまった。無期でも死刑でもないのに、あと半年も真面目に務めていれば仮釈放をもらって、晴れてシャバの人になれたというのにだ。平尾くんはトンズラしてしまったのだ。
そんなことでは、また同じことを繰り返してしまうぞ!と現在、取り調べ官にも言われているであろうが、本当その通りだ。

あと半年。普通の懲役なら往生してグッと辛抱するであろう。だけど平尾くんは、あえて茨の道とも言える逃走劇を選択してしまっている。
平尾くんの逃走劇は、かなり滑稽とも言えるのだが、見方を変えれば「リアルトライアスロン」ではないか。海まで泳いでいるのだろう。
平尾くんには申し訳ないが、命を狙われている訳でもないのに、そんなバカな逃走をしてまで造船所が嫌だったのか、と呆れかえってしまう。

今後、平尾くんには海を泳いで渡るよりも、もっと精神的に過酷な試練が待ち受けており、結果半年で社会復帰することは不可能になった。
受刑中に脱獄してしまったのだ。
仮釈放をもらえるどころか、増刑となり刑期も加算。当面は受刑被告として、刑期を務めながら今回の逃走に関した裁判を受けることになってしまう。

半年後、平尾くんはきっとこう後悔するだろう。
「逃げなきゃよかった、、、」
と。

しかし、それも平尾くんがやったことである。悪いのは、刑務官でも同囚でもストレスでもなく平尾くんなのである。
刑務所の身分帳にも「脱獄」のレッテルを貼られ、要注意人物として、今後、色眼鏡で見られる。
幸いまだ平尾くんは若い。
全くの他人事だから言えるが、しっかり今度こそ刑期を務め終え、やり直せば良いではないか。
平尾くんならできるはずだ。
本当、他人事なのでいい加減なことを言って恐縮である。


●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)