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ルポ尼崎

新装改訂版『尼崎の一番星たち』絶讃発売中!ー尼崎極道炎上篇ー

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ルポ尼崎


 某テレビ番組にて、尼崎市民の市民性を検証されたことがあった。
「市民性を調査している」と許可を得てインタビューしたものではないため、尼崎市民の本音がムキ出しになる。
市外の人にとっては、社会の教科書に工業地帯と記されているせいか、それとも公営ギャンブルが充実しているせいか、ガラの悪い街という印象があるのかもしれない。
だが、尼崎市民にしてみれば、そんなの昔の話だ。
「以前は4つもあった所轄署は3つになっている。治安が良くなった証拠だ」「ギャンブルの街? 競馬場や競艇場はあるけど、競輪場がないやないか」と胸を張る。
そう尼崎市民は自分たちをどの地域の人間よりも紳士的だと信じて疑ってないのだ。
それは特異な体質と呼んでもいい。これが尼崎市民を尼崎市民たらしめる所以でもあるが、出身地を尋ねられた時に、その特異体質が明らかになる。


「尼ですわ」


 尼崎市民なら必ずこう答えるのだ。
決して「兵庫県尼崎市です」と野暮ったいことなんて言わない。
近くに尼崎市民がいるなら試してみるといいだろう。市外局番が「大阪06だから」とか、そんな単純な理由では語れないほどの自信を込めて、「尼ですわ」と返答してくるはずだ。


「兵庫県」の看板を出さない感覚は、「日本最強の4次団体」と言われた三島組が上部団体の看板を出さないことに似ているといえば、アウトロー社会の方々にはご理解頂けるであろうか。


 大阪市西成区に本拠を構えた三島組は山口組の保守本流と言われた山健組、その傘下でも一大勢力となる健竜会に属する組織。山健組も健竜会も武闘派として名高いのだが、三島組が他組織とバッティングしたとしても「山健や!」とか「健竜じゃ!」とは言わない。どんな組織に対しても「三島じゃ!」で通し、最強の名を欲しいままにしてきた。
それは、最盛期に数百人という手勢を従え、団結があったればこその三島組の力だった。


 それと同じく尼崎市民46万人の団結は、市民を支える力となっている。市民同士の連携は塀の中になると、遺憾なく発揮されることになる。


「尼ですわ」
「えっ、尼なんや」


 この会話だけで、尼崎出身の懲役たちが「尼の舎(グループ)」を形成したりするのである。
そこには打算もなければ、相手の器量をはかることもない。ただ、「尼」という共通項があるだけ。


そんな尼崎という街でオレはヤクザをやっていた。
確かにヤグザとして生きていた。
ヤクザとして、どこまでも広がる空を見上げて生きていたのだった。


●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)