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沖田臥竜の日常エッセイ!『茜いろの日々』第9話

沖田臥竜の日常エッセイ!『茜いろの日々』第9話

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上京物語

先日AbemaTVの収録の為に東京へと行ってきた。最低でも1ヶ月に一度は上京していれば、スケジュール的にもそこまで慌ただしくなりはしないのだろうが、なかなか日々の雑務に忙殺されているとそういう訳にも行かず、結果2ヶ月に一度上京できれば良い方となってしまっている。
必然、一回の上京でスケジュールを詰め込んでしまう為に否が応でも凄まじいまでの強行軍となってしまうのだが、それも致し方あるまい。

今回の収録では、『闇サイト「ダークウェブ」の脅威』という事でお呼びいただいのだが、ロケ現場について早々、ダークウェブではないところで脅威させられることになってしまったのであった。
それは出演者の方々と名刺交換をしている時であった。
まずよくTVに出演している人と名刺交換をした際の話しだ。
「以前、バイキング(フジテレビ)で一度お会いしましたよね〜」
と言われ「そうでしたっけ」と曖昧な笑みを浮かべて返したのだが、私は知っていた。私はバイキングに出演したことがない。しかし周囲に人が沢山いたタメに否定するのが少し恥ずかしかったので、すっとぼけてやり過ごしてみせたのである。

しかし私とてそれくらいで恐れおののいたりしない。
一通り名刺交換が終わり、出演者の方々と雑談している時であった。
控え室の扉が開き、えらく男前のかたが入ってきたのだ。他の出演者の方々と挨拶しているのを聞いているうちに、その人がセキュリティー会社の社長であることが分かった。
私の番になり立ち上がり名刺を手渡しながら、「沖田です」と挨拶した時であった。
社長は私から名刺を受け取りながら、私の顔をマジマジと見出したのである。瞬時に私は悟った。
この人はオレのことを知っている、と。
丁寧に私の名刺を受け取った社長は、こう口を開いた。

「いつも各方面からお名前は伺っております」

書く仕事をし出してから、こんな私でもそう言われることもなくはない。その際は決まって「いえいえ」と何故か否定してしまうのだが、それは大概の場合、暴力団の取材をしてる人かもしくはその関係者と決まっている。
何故、セキュリティー会社の社長がしがない私のことを知っているのだ。各方面とは一体どんな方面なんだ。問いただしたい衝動に駆られたのだが、もしニヒルな笑みを浮かべられて「各方面ですよ」と不敵に微笑まれては卒倒してしまいそうなので、またしても「いえいえ、、、」と曖昧な表情でごまかしてしまったのであった。

「なぜセキュリティー会社の社長がオレのことを知っているのだ、、、」
収録中、そればかりが頭の中を駆け巡り、いつしかダークウェブの脅威よりも、そのことの方が私の中で脅威として君臨してしまっていたのであった。

収録が終わるとロケ現場まで猫組長が迎えにきてくれ、久兵衛に連れて行ってくれたのだが、その道中に猫組長にそのことを告げると、「うそっ!色々調べられてんちゃう!」と上機嫌で言われ、ますます脅威として私の中で大きく広がっていったのであった。

「各方面って、どの方面ですか?」
勇気を振り絞ってやはり聞き返しておけばよかったのだろうか。でも逆に大して知らなければ、それはそれで恥ずかしいか。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)