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官も看も肌合わぬ⁈

新連載!沖田臥竜の日常エッセイ!「茜いろの日々」スタート!

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ー官も看も肌合わぬ⁈ー

何がめでたいかどうか分からぬが、私の最後の懲役となった大阪刑務所の出所日(満期日の翌日)は、元日。1月1日だった為に、正月になるといつも「あ〜あ出所から、もう◯年か」としばし物思いに耽るのだが、ここ3年。正月は何故か病院に縁がある。

今回の入院は1年前に退院していた時から決まっていたもので突然やってきたものではない為に、別段慌てることもないはずであったが、正月からの入院、手術は実のところ予定外であった。

私ははっきりと医者に言っていたのだ。
「正月の入院だけはやめてや」と。
医者はグッドスマイルで「了解!」と言っていたくせに「入院は正月にしてや」と勘違いしてしまっていた為、新年早々入院する運びとなってしまったのである。

前回の入院では、看護師の女性陣と徹底的な衝突を繰り返した為に、今回も嫌だな〜っと思っていたのだが、私を出迎えた看護師の第一声は病棟も前回の入院時と同じだった為に「お帰り〜」と出迎えられたのである。
とは言え、家ではない。「ただいま〜」と言うわけにもいかず、曖昧な笑顔を浮かべるに留めたが、ある看護師の一言で私は凍りつくハメになってしまった。

「ツイッターみてますよー」

笑いながら言う看護師の表情を私は凝視することができなかった。

私クラスの書き手が街を歩いていたところで、そうそう「あっ!」と知らない人に言われることは滅多にない。そもそも私は人前に出ずに済むのであれば出たくない性分なのである。
なら何故でる、と言われるかもしれんが、答えは簡単である。出ぬと本が売れぬからじゃ!!!なのだ。
ともかく私のような書き手のツイッターをどうして、向こうに回していたナース陣に知られることになってしまったのか。それは私自身の不覚にあった。

前回の退院時に私はつい1年後再びやってくることも忘れ、お騒がせしてしまったと、著書をナースステーションに置いて帰ってきてしまったのだ。
「みんなで読みますね!」
と喜んでくれた看護師に、内心みんなで読まんとみんなで買ってくれよ、と思いつつ病院を後にしたのだが、そのお陰でツイッターまで看護師を辿りつけてしまったのだ。
凍りつきながら、私は瞬時に決めた。入院中はツイッターを呟かないことを。

流石に看護師さんたちも「ツイートしないんですか?」とまでは言ってこなかったが、ナースステーションでは話しのネタにされていたことは間違いない。
あれだけ前回の入院時には威勢の良かった私が、今回はナースステーションの前を車椅子で通過するたびに、こそこそ身を隠すようにしていたのは、滑稽以外の何者でもなかっただろう。

しかしこの看護師さんたち。仕事とはいえ正月早々よく働く。見る角度が変わったせいか、夜中でも走り回っている姿を見ていると、本当に良く働くのである。若い看護師さんの働く姿を見ていて思ったが、クリスマスイブなんかもこうして働いているのだろうな、と思うと見方が随分と変わり、前回言えなかった言葉。「ありがとう」なんて言葉も口からポンポン飛び出していった。
もう少し私が書き手として世に認知されておれば、サインの一つや二つくらい書いてやるのに、すまぬしがない書き手で。誰一人サインをねだってもくださらなんだ。

また私の入院の特徴の一つにお見舞いというのがある。前回の入院では看護師が「もうお見舞いやめてください!」と何度も言ってきたほど、日頃疎遠だった人たちまでも正月ということもあってか、お見舞いの品々を携えて会いに来てくれる。

もしかすると、「ワシは入院している方が食えるんじゃないか」なんて錯覚してしまうほど、お見舞いに来て頂くのだが、世の中そんなに甘くないことを実は身に染みて知っている。
たまに少し入院するから皆きてくれるのであって、そんなしょっ中しょっ中入院していたら誰が心配して来てくれるか。そりゃ来んわな、と思いながら、看護師さんの働きぶりを横目にしつつ、痛む足を時折ほぐし、届けられるお菓子をボリボリ頬張っていたのであった。


●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)