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〜文政ファミリーツインタワー〜

『尼崎の一番星たち』出版記念!生野が生んだスーパースターTake2

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〜文政ファミリーツインタワー〜

 喧嘩ファイターKが「無敵」ならば、バッテツは、「ステゴロキング」である。
 年は私の4つ上。文政からしても2つ上になるので、バッテツはひと世代上の時代から「ステゴロキング」の名を欲しいままにしていた。
 趣味は筋トレ。40も半ば過ぎ50の坂にさしかかろうというのに、まだ「キング」の称号を誰にも譲るつもりがないらしく、常時ケンカに備え、肉体を鍛え上げている。
 無論、仕事なんて野暮なことをバッテツはしない。本当に筋トレ以外なにもしない。
 ただ、流石にそれではメシを食えないので、大きな恐喝はしているらしく、身なりはいつも高級ブランドで着飾られていた。
 風貌は黒人。そんな男が粋に赤のスポーツカーを乗りこなしているのだから、似合わないわけがない。
「あのねあのね、兄弟コイツどついてもええかなっ」がバッテツの口ぐせである。
 かりに文政が「かまへん」と言おうものなら、丸太のような右腕が唸りを上げる。瞬殺である。


「はぁ!? ケンカ!? ワシのほうが強いに決まっとるがなっ」
 喧嘩ファイターのKとバッテツが一戦交えれば、どちらが強いか、話題にならないわけがない。
 その日、Kは、したたかに酔っていた。
 けしかけたのは、他でもない文政だった。
 バッテツをふくむ3人で、地元・生野にある焼き肉店で、肉を食べていると、文政がKにこうけしかけた。
「いくら、Kでもテツの兄弟には負けるわなっ」と。
 普段のKは文政を通して回り兄弟となるバッテツのことを、年上ということもあって、敬意を払っていた。だが、Kは酒に酔い始めると、そんなこともお構いなしになってしまう。
「はぁ!? ケンカ!? ワシのほうが強いに決まっとるがなっ」
「あのねあのね、Kお前しばくでっ」
 どちらかと言えば、バッテツは温厚な性格である。というか、筋トレ以外興味がない。だが、自分の領域である「ステゴロ」に話しが及ぶと、パチンとスイッチが入る。
「アイゴ~! バッテツくん、それ本気で言ってんの!? アイゴチェケタッ~(ビックリした)! ぶち殺すど!」
 立ち上がるK。焼き肉店なのに、軟骨をバリバリ頬張りながら、既に立ち上がっているバッテツ。
「あのねあのね、自分、ここで殺してまうよ」
「アイゴ~! まだゆうとるわっ。こんかえっ!」
 正に一触即発。すわっ! ドリームマッチ到来かっ!?


「じゃかましいわ、ハナクソっ! オドレらケンカすんのやったらワシ帰んどっ!」


自分がけしかけたクセに、言うが早いか文政は立ち上がると、怒って店から出て行ってしまった。
 察するにだ。文政はバクチですっからかんにスッてしまい、2人に焼き肉代を払わせようと考えたのではあるまいか。愛すべき男である。
「あのねあのね、兄弟ちょっと待ってくれる~」
と行って後を追いかけるバッテツ。
「ちょっと待ったらんかいっ、お前らっ!」
 二人の後に続こうとしたKを、焼き肉店の店主が呼び止めた。


「Kくん、6万2800円」


「アイゴ~」である。
 喧嘩ファイターvsステゴロキング。夢のドリームマッチ初戦。K、戦わずして、敗北。


●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)