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救急車の正しい使用方法 文・沖田臥竜

救急車の正しい使用方法 文・沖田臥竜

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ー「救急車使い」エテ吉の末路ー

その昔、尼崎 の裏社会に棲息する住民達の間では、なんらかの形でヤサへと警察に踏み込まれた際の対処法として、救急車を呼んで脱出をはかるという力技が小さなムーブメントを起こしていた。
間違ってはならないのは、到着した救急車に乗りこみ、そのまま病院まで搬送してもらおう、とならない点だ。そんなことをしてみろ。救急車ではなく警察の思惑通りパトカーに乗せられてしまうだろう。そうではないのだ。

とにかく救急車を呼ぶことで、一時的にでも場を混乱させ、取り囲んでいた警察官の気をそらすのである。その際に生まれ一瞬のすきをついて、脱出するのだ。必然、難易度はすごぶる高く、協力者も必要とされる上、失敗すると偽計業務妨害など、様々なオプションをつけられてしまうが、実際、その手法でその場から逃げ出すことに成功したケースも過去少なくなかった。 そんな非常識な「救急車使い」を逆手にとってみせて、大顰蹙を独り占めさせたのが「エテ吉」というサルであった。

 「エテ吉」は自分の後輩達に難グセをつけては、金を巻き上げるという行為に精を出していた。
 だが次第に居留守という対策を立てる後輩達が続出してきてしまったのである。「エテ吉」にとっては死活問題だ。
「エテ吉」は無い頭を抱え込んだ。ない頭では微塵にも「働く」という発想が出てきてくれない。そうした末に産み出されたワザが、救急車脱出逆ヴァージョン。救急車捕獲ヴァージョンだったのだ。救急隊員を始め、エテ吉に関わらされた人間、全てが迷惑でしかない必殺技である。
どういった仕組みかと言うと、バカの発想である。簡単である。居留守を使う者の家に救急車を到着させ、慌てふためいて出てきた後輩を捕獲するだけである。

「こらっ!やっぱりいやがったな!居留守返しじゃ!!!」

とエテ吉が叫んでいたかどうかまでは知らないが、居留守返しの発案者であるエテ吉は、その後、すぐに警察に捕獲されることとなり、現在は塀の中のサルとなってしまい、今では救急車どころかせいぜい刑務官を呼ぶことしか出来ない暮らしを余儀なくさせられてしまっている。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)