>  > ー世間を震撼させる少年事件ー少年法の御加護はどこまで必要なのかー 文・沖田 臥竜
少年法という名の加護

ー世間を震撼させる少年事件ー少年法の御加護はどこまで必要なのかー 文・沖田 臥竜

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2016年2月29日に東京都日野市で、発生した事件「路上で男性が刺されている」と通行人から110番通報があり警察官が急行。犯人は当時15歳の少年。駆けつけた警官が身柄を確保しようとしたところ、警察官に対しても刺すような素振りを見せたため、警察が威嚇発砲。逮捕された少年は、包丁のほかに熊手のような形をした自家製の武器を所持。その後の供述で少年は「警察官を攻撃して、拳銃で撃ってほしかった」と語ったのであった。


 この少年は、一人でテロでも起こすつもりだったのであろうか。
 刺された20代の男性と少年の因果関係はわからないが、多分被害者の男性と少年の間に接点はなかっただろう。
 仮に接点のない相手を刺し、駆けつけたパトカーの窓ガラスを自家製の武器で叩き割り、かつ警察官まで刺してしまおうと考えたのであれば、それはもう事件ではない。もはやテロであるまいか。
 ただ、この孤独な少年テロリストは、警察官を刺そうとはしたものの、警察官に威嚇発砲され、逮捕されてしまっている。少年も警察官も無傷であったところをみると、発砲に怖じ気づいてしまったのであろう。
 なにが少年をテロへと駆り立ててしまったのかはわからない。好きな娘さんと思いを遂げられなかったのか、友達がいなくて仲間はずれにされていたのか知らないが、どのような理由があったにせよ、この行為がどれだけ両親に迷惑をかけることになってしまうか考えたことがなかったのだろうか。
 自家製の武器を手にしていた時点で、少年の心の中の薄暗い闇が見え隠れしてしまうが、そんな中で少年はどういう気持ちで自家製の武器を制作していたのでだろうか。その作業は、怨念となりどこまでいっても孤独以外の何者でもない。

 だが実際、この少年が命拾いしたことは、確かである。
 昔、留置場の運動場で爪を切りながら、世話になった警察官と世間話していたときのことだ。たまたま話題が、今回のような場面に遭遇したらどうする?みたいなものになったことがあった。
 その警察官は、微塵の戸惑いも見せずにこう応えた。
「暴漢が襲いかかってきたらってか? 脳天ブチ抜くに決まっとるやろ。相手も殺す気で来とんのやろ? 迷わず脳天めがけて引き金を引くな〜」
 ま、この回答は回答で問題あるような気がするが、故意ではなくとも脳天や胸を撃ち抜いてしまうケースもなくはないだろう。
 この事件では非常に冷静沈着な警察官だったため、少年を傷つけることなく制圧できたが、かりに脳天をブチ抜いてしまったとしても「適切な発砲である」として処理されていてもおかしくなかった。
 そうやって考えると、この孤独なテロリストは命拾いをした訳であるが、果たして少年院を薄暗い闇は排除され、社会へと現在復帰を遂げているのか。少年法のご加護により、その消息を知る術はない。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)