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『若気の至り』

元山口組系組長が昭和を回想 文・山元 康徳

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『若気の至り』

そやな六代目山口組分裂を聞いた時も、そんな大して驚きはせなんだ。体制的なもんがどうのこうのやなくて、ワシらは山一抗争(四代目山口組と一和会との間で起こった山口組史上最大の抗争)を体験しとるから、何が起こっても不思議やないという感覚がどこかにあるんや。
そもそもヤクザとは明日が分からん稼業やさかいにな。
もっともワシは山一の抗争の時は、道具(拳銃)7丁挙がって懲役いっとったんやけどな。
7丁で懲役が7年や。今じゃ考えられんやろ。しゃあけど、ワシかて考えられへんかったんやで。
なんでか言うたら、道具を兄弟分から預かったの踏み込まれる前の日や。

「兄弟すまんけど、明日まで預かっとってくれ。明日には取りにくるさかい」
言うから預かったら、取りに来たのがサツて笑うに笑えんがな。
もちろんそんなことウタう訳にいかんよって、ワシが持っていったがな(自分が庇って懲役にいくということ)。

塀の中では色んな人間と一緒になったで。少年院では極心連合会の会長とも一緒なったし、神戸山口組の最高幹部とも同じ工場で務めたこともあった。
何十年も前の話やで。それでも覚えとるいう事はやっぱり他の懲役と何処か違ったんやろな、当時からな。

シノギもようさんやった。シャブの売買からチャカやろ。それに博打になんでもやった。
人の生き死にも見てきたわな。
チャカで失敗して懲役に行くことなった話したけど、助かった話かてあるんやで。

何キロやったかな。シャブを家で抱えてる時に、もうその時点で内偵バッチリ入れられとったんやけどな。それもまた次の日に顧客の薬局に卸すことなっとったんや。

家のベルがなった思ったら、玄関の鍵をガチャガチャ回す音がしよんねん。サツのヤツ大家を連れてきて鍵開けさせとんねん。悪いヤツやで。悪いのはワシか。

そやけどワシかて抜かりあるかいな。そんなこともあろうかと内側に自分で鍵つけとったんや。
その間にシャブを全部便所に流したってな。これは助かった。お陰で大損こいたけどな。
もちろんシャブは御法度や。しゃあけど若い頃は誰でも通る道や。30も40も過ぎてやっとる者はアホやけど、誰でも一度はやってきた道やとワシは思うで。
後に有名なった大親分も若い頃は、タタキ(強盗)にギャングやっとったくらいやからの。

昭和は遠くなりにけりちゅうこっちゃ。


文・山元 康徳