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衝撃の最終回小説『忘れな草』第51話

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平成21年12月28日


なんの前触れもなく、今日いきなり、ゆまが面会へとやってきた。
最初、今更なんやねん、って正直思ったけれど、泣きながら謝るかおりを見て、オレも泣いちまった。
四日後の出所には、チビ達を連れて迎えにくるから、もう一度やり直して欲しいとゆわれた。
あいのすけが毎日オレの話しをして、一人で盛り上がっているという。わかったとこたえ、ゆまとやり直すコトを決めた。

正直、オレは今の今まで、ゆまのコトを恨んでいた。
人が困っている時に、他の男と一緒になった奴なんて、死んでしまえ!、と思っていた。
それが心からホッとしているのは、なぜだろうか。
喜んでいるのは、なぜだろうか。
胸いっぱいになって、昼食も夕食もノドを通らなかった。
同室の吉岡氏が一緒になって泣いてくれた。
考えてみれば、吉岡氏とは二年もの間、同じ部屋で寝食を共にして暮らしてきた間柄だ。
自分のコトのように喜んでくれる氏を見て、また男泣きしてしまった。

びっくりするコトは続くもので、午前の作業中、ずっと音信不通だった姉から電報が届き、女の子を出産したらしい。
名前は「茜」と書いて、あかねとのコト。
逢える日がたのしみだ。
来週からはゆま達との新生活が始まる。
この四年間、楽しいコトや嬉しいコトなんかよりも、ぶっちぎりで辛いコトや淋しいコトの方が多い受刑生活だったけれど、今日、ゆまが来てくれたコトですべてが報われた。
幸せにしてやろう。
どんなコトをしても、チビ達三人を立派に育てあげてやろう。
小説も書かなくてはならないし、これから本当に忙しくなる。
後、四日でオレも娑婆の人。
どんな未来が待っているのか。
面会室からの帰り道、この冬、初めての雪が舞っていた。

今夜は眠れそうもないな...。


END


●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)