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小説「忘れな草」第43話 最終章 沖田臥竜

小説「忘れな草」第43話 最終章 沖田臥竜

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平成20年12月


先日ゆまに出した手紙が、本日夕刻に再びオレの元に舞い戻ってきた。
どうも彼女は引っ越されたようだ。
ハッハハハって、笑えねえよな。
泣きっ面にハチとは正にこのコトだな。
舞い戻ってきた手紙を一読して、あらためて確信したけれど、オレよ、相も変わるコトなく最低だな。
でもこの胸の痛みはなんなのだろうか。
心のどこかでこれを読んだゆまが反省し、泣きながら面会にでも来てくれると思っていたのだろうか。

どこまでいってもオレという男は滑稽だ。
しかし何もわざわざ樹愛の誕生日の日に舞い戻ってくんなよな。
なんだか余計惨めじゃないか。

こんな姿、樹愛にみられたら、笑われるだろうな。
ーなに泣いてんねんっ。じっちゃん、あんた男なんやろ、男のくせにめそめそしいなっ!!ー
て、あの頃のままの声で、今のオレを叱って欲しかった。

ーありきたりやけど、樹愛、誕生日おめでとさんやでぇ(毎年日記に書いとんな(笑) )。
こんなんゆうたら、怒られるかもしれんけど、樹愛も、もう三十三か。すっかり、おばちゃんなってもうたでな。
山神の実子はどうや。ええ男か?
オレはまたええ恋探してそれなりにやるから、樹愛も幸せにしてもらえよ。
いつかまた友達として笑って逢えたらええな〜。会いたないってか。アッハハハまぁ、そうゆうなっー


いつもキャンキャンと懲役に吠えたてる担当のオ
ヤジが今日はやたらとオレに優しかった。
ここ最近の手紙のやりとりの内容から、オレの心情を察してくれているのだろうか。
官と懲役はどこまでいっても、水と油である。
まじわるコトは決してない。
されど、官も懲役も人の子だ。
何気ない担当の一言にホロリとさせられてしまうコトだってある。
人の情けは有り難い。

手紙...やっぱり届かなくてよかったかもしれないなっ。
さぶくなってきた。

来週は遠く離れた母にでも、便りするか、、、。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)