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山口組食堂

菱のカーテンの向こう側 〜暴排条例の煽りから誕生した山口組食堂〜

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菱のカーテンの向こう側 〜暴排条例の煽りから誕生した山口組食堂〜(2015、11月1日初出)

 皆さんは、六代目山口組総本部内に、通称"山口組食堂"なるものがあるのをご存知であろうか。
 関係者の話によれば、その食堂の歴史はまだ新しく、せいぜい4、5年程度(2015年当時)らしい。
今回はその謎のレストラン(?)山口組食堂の秘密に迫ってみたい。


 まず場所であるが、関係者の話を総合すればガレージ当番の待機部屋の奥にあるらしく、五代目時代にはその場所をスワット部隊が使用していたようだ。
 食堂といっても、もちろん一般公開されているわけではないので、関係者しか立ち寄る事はできない。使えるのはあくまで山口組組員に限られている。
 メニューは至ってシンプルなものが多いらしく、鍛え抜かれた本家部屋住み組員によって賄いされているため、どれも上手いという。
 ただし、種類が選べるほど豊富というわけではなく、日替わりのメニューがしっかり決められており、だいたい朝食は焼き魚に卵焼き、ハムエッグ、ウイナー、納豆、そして味噌汁といったものが多いようだ。
 ガレージ当番のときに、この食堂を利用したことのある某組の若手組員は「朝食をしっかり食べられて、なかなかありがたかったです」と話してくれた。
 ちなみに昼食は、カレーライスやうどんが多いようで、この味付けも絶妙らしい。
「そりゃそうやろう。プラチナの親分らも、ここで昼済まされんねん。ヘタなもん出てくるかいな」(二次団体幹部)


 想像でしかないが、一般的にヤクザの親分はいいものを食べていて、舌が肥えてそうなイメージがある。以前、違う取材中に聞いた話なのだが、仮にインスタントラーメンを食べるにしても、かける手間暇は凄まじく、「インスタントラーメンがインスタントラーメンでなくなってしまう」と聞かされたことがある。そういう親分衆も利用する食堂が、絶品でないはずがない。
 そして、気になるお値段であるが、なんとすべて無料というではないか。


「当たり前やけど、親分について本家に出入りしてる運転手や付き(お付きの若い衆)には、毎日、メシ代は渡したらないかん。それが削減されるのは、このご時世、みんなありがたいと思ってると思うで」(前出、二次団体幹部)と、これにはどの関係者も助けられている様子。
 また「以前は、昼時になったらいったん外に出て昼飯食いに行ってたけど、どの店も混んでる時なんかは、食う時間がない時もあった。でも食堂のお陰で、その心配はなくなった」(某組若手組員)という声もあった。


 ただし、一方ではこういう声もあった。
「そりゃ気をつかいまんがな。だいたい昼はプラチナの叔父さん(直系組長のこと)から順番に食べていくねんけど、全員が順番に食べはるわけやない。もうみんな食べはったかな、思って食べとったら、いきなり叔父さんが入ってきはることもあったりしてまう。どの叔父さんらも、『かまへん、食べ食べ』ゆうてくれまんねんけど、気を使いますわな。
 味? それはうまいでっせ」(関西の二次団体幹部)


 究極のタテ社会であるヤクザの世界ならではの悩みであろう。う~ん、とうなされる話ではあるが、やはり味については、評判がいいようだ。我々もぜひ一度、この舌で味わってみたいのだが、組員として修行を積む覚悟も度胸もないので断念せざるをえない。


 また、山口組食堂には経費の削減といった側面だけでなく、暴排条例対策という一面もある。以前は、総本部の周辺にあった弁当屋さんやどんぶり屋さんなど、バリエーションに富んだメニューの中から注文できていたらしいのだが、暴排条例の施行以降、その種類が大幅に制限されてしまい、かつてはお馴染みだった食堂なども現在では注文できなくなってしまったところもあるようなのだ。
また、わずかに残った弁当屋さんでさえ、いつ配達をやめてしまってもおかしくない状況だという。
 
だが、そうなったとしても、山口組食堂があれば三度の食事には不便はしない、というわけだ。
 もっとも山口組はそれでいいが、長年のお得意先であった山口組からの注文がぱったり途絶えてしまった店側にとっては、ある意味、迷惑な話かもしれない。毎日、決まった個数が確実にはけていたのに、これからは客がヤクザという理由で注文を受けてはいけなくなってしまったのだ。
小さい規模の店なら死活問題になってしまうのではないだろうか。
 そんな悲喜こもごもの詰まった山口組食堂。


今回も菱のカーテンの向こう側を、ほんの少しだが垣間見ることができたのではないだろうか。


(RーZONE編集部)
現在発売中「菱のカーテンの向こう側」に収録