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沖田臥竜、新連載『忘れな草』第1話

今宵降臨!沖田臥竜、小説『忘れな草』開演!

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沖田臥竜presents!小説「忘れな草」今宵、降臨!

忘れな草

平成19年 9月1日

殺意すら感じる。憎しみすら感じる。
なぜに奴は面会へとやってこんのだ。

「好きにせんかいっ!このアホンダラぁっ!」

言えるものなら言ってやりたい。声を大にして
言ってやりたい。でも出来ないコトを知っている。なぜならば本当に好きにされてしまうからだ。好きにされると困るからだ。

遠い遥か彼方前に親御さんに抹消されてしまったオイラは女に見捨てられてしまうと文字通り、ミナシゴハッチ?になってしまう。売られて行く子羊の気持ちがわかってしまう。
それは困る。実に困るぞ。実際恐怖すら感じてしまうもんな。

今のオレに出来るコトといえば心の中で奴を罵倒し、シーツをギィギィギィーッと噛み締めるコトと、小説を書くコトくらいだ。
こんな精神状態でどんな小説が生まれてくるのか、書いてる本人のオレからして甚だ疑問であるが、書くコトで多少なりとも落ち着けるのは事実だ。夢を見れたりするしな。

「今に見ておれ!」その一念だけで鬼のような執念で書く。
掌を返した奴ら。特にお前だ、おまえっ!オレが作家様となり、世の人々から「先生」と呼ばれるところまで辿り着いた暁には、死ぬ程後悔させてやるからなっ!キィーッ!!

そんな妄想...いや失礼。誠に失礼。オレに失礼。
そんな愚行...いや違う。もっと違う。これもオレに失礼だ。
そんな野望...う〜ん、これもイマイチ美しさに欠ける。
そんな理念...まぁこの辺りか(って、一体オレは何を一人でぶつぶつと 書いておるのだ...)

そんな理念と数々の思惑?が入り乱れた思考の中で、恋愛小説を書く。

オレが作家になればあのバカもきっと、面会へと来なかったコトを詫びるはずである。10日も手紙を出さなかったコトを反省するはずである。
だけど今は詫びもせぬし反省もせぬ。
なぜか?答えは簡単である。
オレが「作家様」でないからだ。

刑務所に養ってもらっている可哀想な受刑者だからだ。
怒る権利など、どこにもございません。
だけど怒られる権利はございます。

パクられて1年半も経つというのに、2年も前にキャバクラのネエちゃんとかわしたメールのやりとりを、いまだにネチネチと言われる権利が存在します。

早いとこ娑婆へ出たい。一歩、娑婆にさえ出れば今オレを苦しめる悩みのほとんどが解決されるだろう(もっとも出れば出たで又違うコトで頭を悩ましているのだろうけど...)

受刑生活はまだ2年4ヶ月続く。奴と3人のチビはオレの帰りを本当に待ってくれているのだろうか。
不安はいつだって恐怖と共にやって来る。

「好きにしくさらんかいっ!このアホンダラぁっ!」
やっぱり言えんよな...。

今日の夕方、昔よく聞いた思い出の曲がラジオから流れたコトを最後に書き記して置こう。

思わず流れるメロディに当時を思い出してしまい、胸を詰まらせてしまった。

これだけのコト。たったこれだけのコトだけど、塀の中では何だか得した気分になれて、良いコトでも起こってくれそうな、そんな気持ちにさせてもらえる。

くどいようだが、旅路は後2年4ヶ月。自業自得とはいえ、長いよな...。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)。