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「忘れな草」第14話

新連載!「忘れな草」第14話

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(3)平成20年1月

DEARじいくんへ

本間、最近手紙と面会が前までみたいに出来なくてごめんね。
朝は調子よくても、急にしんどくなったりして、ほとんど家からでれてないねん。
じいくんのお母さんが、冬休みにはせっかくチビら連れて泊まりにおいでって言ってくれてたのに、結局体調悪くていかれへんかったし...。
早く元気になって、じいくんを安心させてあげんといかんね。
心配ばっかりかけてごめんね。

じいくんからの手紙は一月四日に届きました。

キレイになったって書いてあったけど、キレイなったかなぁ?
付き合い始めた頃は、さんざん可愛くないとか、なんでゆまがモテるかわからんっ、とか言ってたクセにっ!!(笑)

あっ!樹愛って人のほうが可愛かったって言ってたコト思い出したぁ!最低だね、じいくん。
あいのすけに言いつけたろ。
そしたら、きっと
「あのハゲ、そんなコトゆうてんかっ!!」
て、プンプン怒り出すと思うな。
最近のあいのすけのお気に入りは、「あのハゲ」です(笑)

そういえば、この前あいのすけが、じゅりが丸ボウズの間は、カッコ悪いから一緒に歩かないって言ってたよ。大変だね、じいくん(笑)
ゆまをイジメた罰です。

また手紙書くから、あんまりスネスネしたらダメやで♡
あったかくして、風邪引かないようにして下さい。
ゆま


1月22日

ぶち殺してやろうかと思った。
正確には、ぶち殺してやりたい、と思った。
3週間振りに届けられた手紙がコレである。
普段は年上のオレを捕まえて、「塚口」などと軽々しく呼び捨てで呼びやがるクセに、後ろめたいコトなんかがあると、途端に奴は「じいくん」などと呼んできやがる。
いつの日か奴に鬼検事はだしの厳しい尋問をする為に、一つ一つ日記に指摘しておいてやろう(なんだか落ち込んできたのはコレ気のせいかぁ!?)。

まずだ。家から出れないクセに消印が県外なのはなぜだ。
おちょくっとるのか!!。
オカンが遊園地のチケットまで用意して待っていた、というのに、それを袖にしやがって。
揚句いうにコトかいて「キレイになったかなぁ???」だとおっ!。知るかそんなもんっ!!
おべんちゃらでも書かなんだら、面会どころか手紙もよこさんから、書いただけだろうがあっ!
額面通りうけとるな、この大バカ者!
そしていらぬことまで思い出すなっ!何がまた手紙書くからあんまりスネスネしたらダメやでぇ♡、だ!気分は売れっ子アイドルか!

心配してホントに損をした。
この3週間、何度怒りにまかせた便りを認め、その都度、何かあったのでは、と考え直し発信を見送ったことか。
それでやっとこさきた手紙が、もう一度言う。いや書く。「スネスネしたらダメやでぇ」そしてハートマーク。
正直に言おう。オレは殺意を覚えたぞ。
日記にこんなことを書き殴っても仕方ないけれど、直接書くことは、はばかられるのでブツブツ言いながら、ここに書くしか術がない。
なんだか、書けば書くほど気が滅入ってくるのは、気のせいということにしておこう。

刑期もようやく2年を切った。今は腹の立つことがあってもモンク一つ面と向かって言えず、せいぜい面会の折にムスッとしてみせるのが精一杯だが、シャバに出た暁には見ておれ!
新しい女(女優さんが良いなっ)が出来た瞬間に、恨みつらみの言葉と共に、おもいっきり捨て去ってやるからな!
それまで今は、耐え難きを耐えの精神だ。ムギギギギギギギ、、、、、。

でも手紙がきて、ほんの少しだけどやっぱり安心した。愛すべきあいのすけは、たくましく育ってくれているようだ。

●沖田臥竜(おきた・がりょう) 元山口組二次団体最高幹部。所属していた組織の組長の引退に合わせて、ヤクザ社会から足を洗う。以来、物書きとして活動を始め、著書に『生野が生んだスーパースター 文政』『2年目の再分裂 「任俠団体山口組」の野望』(共にサイゾー)。最新刊は『尼崎の一番星たち』(同)