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生野が生んだスーパースター文政 ──尼崎極道炎上篇──㉑

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 撃ち殺されたこの男と私は、元々身内同士であった。だが、男が組織から破門され、懲役へと入ったことで袂を別つ事になったのだ。

 男の服役中に、私と男が所属していた三次団体は本部から処分されてしまい、結果本部の直参として残った私サイドと、抜けた側とで激しくやり合うことになっていた。

 文政も、そして文政の実兄の弘吉さんも男と知り合いだったのだが、私の応援で何度となく尼崎へと駆けつけてくれていた。

「兄弟、どないしたんどいっ! 揉め事やったら回したらんかいっ!」と文政が言えば、弘吉さんは「尼のブラザー、ギャングはあかへんてっ!」と何処にいても10分足らずで応援に駆けつけてくれたのだった。

 そうした道中に出所する事になったのが、警察官に射殺された男であった。

 その頃、私は男の破門を解いてもらうように働きかけており、男が出所すれば迎え入れる体制を整えていた。

 その為、私は人伝てに耳にした男の出所の日に、文政と一緒に刑務所へと迎えに行っている。だがここで後へと続く狂いが生じてしまうのだ。

 文政もそして実兄の弘吉さんも男とは付き合いがあった。

「兄弟、今日と違うんと違うか? もうさっきの奴で最後やど」

 私が伝え聞いた満期日が男の出所日と違っており、男を迎えることが叶わなかったのだ。

「そうみたいやな。しぁない帰ろか」

 ここで運命ははっきりと別れた。


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 男は中で知り合ったある幹部の舎弟となり、私と激しくやりやっていた側と繋がっていく事になってしまったのだ。

 これが原因で、迎えるはずだった男と私は向き合って構えることになってしまう。

 渡世上、処分を回されている者を拾う事は固く禁じられている。その為、私の心情がどうであれ、それを知ってしまった以上、男を拾い上げた組織にクレームを入れなければならない。

 筋はどこまでいっても、ウチにあると思っていた。

 相手組織の窓口の人間と話している時に、本人とも話しをすることにもなった。

 そこで売り言葉に買い言葉の大ゲンカになってしまうのだ。

 結局、組織の上層部の知るところとなり、男を拾わないということで形式的には収まりを見せた。

 だがおさまらなかったのが、その男本人であった。

 私を「必ず殺したる!」と言い出し始めたのだ。

 そこから、水面下で様々とやりやっていた内部分裂のバッティングは時に警察の介入を見せながら、一気にエスカレートしていったのであった。

 そうした矢先に、男が警察官に弾き殺されたのだ。

 その死について、私は微塵の哀しさも、感傷に似た寂しさも抱いてはいない。

 あるのは、男が殺されたという現実だけだった。

 男も私もそういった世界で生きていたのだ。男がこの時、殺されていなければ、歯止めを見失っていたバッティングはどうなっていたか分からない。

 誰かが犠牲になっていたかもしれないし、その誰かが私だったかもしれない。男が射殺されてしまった事で一連の内部分裂は次第に沈静化していったのだった。




「華々しく銃声が上がるばかりが、ケンカやないからのっ」

 時に様々な人間関係のもつれから水面下で激しくぶつかり合うこともある。

 煙草の煙を天に向かって吐きながら、文政が呟いた言葉が、いつまでも私の心の奥底に残り続けていたのであった。




(イラスト=山下ユタカ 文=沖田臥竜 写真はすべてイメージです)




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