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生野が生んだスーパースター文政 ──尼崎極道炎上篇──⑲

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大阪市生野区。通称生野。
私には、この生野という街に兄弟分がいる。兄弟の名前は文政(ブンマサ)。年は私より2つ年上の41歳。生野にとどまらず、大阪のアウトロー達の中では文政の名前は広く知れ渡っている。カタにはまることのないそのスタイルは、まさに天衣無縫。バクチと女をこよなく愛し、性格は底抜けに明るく、誰が相手であっても決して物怖じしない。まさに愛すべき男なのである。これから、そんな文政の兄弟について話していくつもりなので、少しの時間お付き合いいただきたい。(沖田臥竜)


おもな登場人物


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文政 いい女とタブバクチを心から愛する、ご存知"生野のブンマサ"。左目は17歳の時に失い、義眼を入れている。相手がどんな大物であろうが、おおむねタメ口で通している。現在は鳥取刑務所でおつとめ中。

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バッテツ 文政の右腕。仕事もせず、ケンカに備え常時筋トレしているという通称"ステゴロキング"。190センチの長身から繰り出されるパンチは脅威そのもの。口癖は「あのねあのね兄弟、こいつら全員しばいていい?」

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まっちゃん 文政の忠実な舎弟。160センチ55kgという小柄な体格をいかした車上荒しのスペシャリスト。その腕前には大阪中の裏社会からスカウトが来るほどだが、本人は文政に対してだけ、信仰にも近いような絶対的忠誠心を持っている。

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ヒカ みどの姉にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の姉のほう。以前、沖田の経営する店で働いていたことがある。優しいけど気分屋で、行動範囲が異常に広い。タレントのスザンヌに面影が似ている。

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みど ヒカの妹にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の妹のほう。とにかく気が強く、とにかく怒られるのが大嫌い。文政を呼び捨てにできる、数少ない女性の一人。タレントの北川景子に横顔が似ている。

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沖田臥竜

文政の兄弟分。通称"尼のブラザー"。この小説の語り手でもある。


幼なじみ こうちゃんの巻


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 こうちゃんと私が初めて顔を合わせたのは、15歳の時だった。

 身長はすらっと高く、黒髪のセンター分け。目がひどく悪いらしく度のきついメガネをかけていた。

 学年で言えば、こうちゃんは私のひとつ上になった。

 こうちゃんは不良というわけではない。普通に公立の高校に通っていた。だけどケンカが滅法強いことと、お父さんが右翼団体に所属していたことで、地元では少し知られた存在だった。

 余談だが、こうちゃんのお父さんが所属した右翼団体こそ、島田紳助のテレビでの発言に腹を立て、抗議の街宣活動を展開させた右翼団体である。

 こうちゃんは暴走族ではなかったけれど、私たちの溜まり場にはよく顔を出していたので、自然と私も話をするようになっていた。だけど特別親しい間柄というわけでもなく、会えば話をする程度の関係であった。

 そんな関係が二、三年続いた後、次にこうちゃんと再会を果たす事になったのは、地元の拘置所の中であった。

 お互いハタチを過ぎていた。

「こうちゃんやんっ! どうしたんっ? えらいやつれて、最初分からへんかったでっ」

「うんっ......」

 その頃のこうちゃんは、どっぷりと覚醒剤に嵌まってしまっていた。

 そして十代の頃、ケンカの強さで名を馳せた男は、「昔はあいつもケンカ強かってんで」という呼ばれ方に変わってしまっていた。


 判決の日。中での規則正しい生活で鋭気を取り戻したこうちゃんは、私にこんなことを言っていた。

「ダブル執行(=執行猶予中の執行猶予判決)取れて、もし今日帰れたら、シャブも辞めて、今の彼女と結婚しようと思ってるねん。実家で兄貴にこれ以上迷惑かけられへんからさ」

 私は自身の境遇に比べて、少し羨ましく感じながらこう返した。

「そうやで、そうしいや。オレは当分、シャバ帰られへんけど、こうちゃんは頑張らなっ」

 これがこうちゃんと最後の会話になってしまった。

《もしもし、沖ちゃん。ニュース観た?》

 同級生のしんちゃんから電話がかかってくるまで、こうちゃんのことを私はすっかり忘れてしまっていた。

《昨日、実家でお兄ちゃん殺そうとして包丁取り出したらしいねんけど、その包丁を逆にお兄ちゃんに奪われて滅多刺しにされて、こうちゃん死んでもうたわ》

 結局、こうちゃんは覚醒剤という泥沼から抜け出すことができず、その泥沼で溺れ続けた。

 それに疲れ切ってしまった、こうちゃんのお兄ちゃんがこうちゃんの人生に終止符を打ったのだ。

 こうちゃんはあの時、言っていた。

「実家で兄貴にこれ以上迷惑かけられへんからさ」

 私は携帯電話を耳にあてながら、なんとも言えない虚無感に襲われていた。

 こうちゃんはあの時、結局、ダブル執行をもらえず懲役に行くことになってしまった。もしあの時、シャバに帰れていれば、もしかしたら何かが変わっていたのだろうか。

 虚無感の中で、私はそう思わずにはおれなかった。




(イラスト=山下ユタカ 文=沖田臥竜 写真はすべてイメージです)




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