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生野が生んだスーパースター文政 ──尼崎極道炎上篇──⑱

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大阪市生野区。通称生野。
私には、この生野という街に兄弟分がいる。兄弟の名前は文政(ブンマサ)。年は私より2つ年上の41歳。生野にとどまらず、大阪のアウトロー達の中では文政の名前は広く知れ渡っている。カタにはまることのないそのスタイルは、まさに天衣無縫。バクチと女をこよなく愛し、性格は底抜けに明るく、誰が相手であっても決して物怖じしない。まさに愛すべき男なのである。これから、そんな文政の兄弟について話していくつもりなので、少しの時間お付き合いいただきたい。(沖田臥竜)


おもな登場人物


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文政 いい女とタブバクチを心から愛する、ご存知"生野のブンマサ"。左目は17歳の時に失い、義眼を入れている。相手がどんな大物であろうが、おおむねタメ口で通している。現在は鳥取刑務所でおつとめ中。

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バッテツ 文政の右腕。仕事もせず、ケンカに備え常時筋トレしているという通称"ステゴロキング"。190センチの長身から繰り出されるパンチは脅威そのもの。口癖は「あのねあのね兄弟、こいつら全員しばいていい?」

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まっちゃん 文政の忠実な舎弟。160センチ55kgという小柄な体格をいかした車上荒しのスペシャリスト。その腕前には大阪中の裏社会からスカウトが来るほどだが、本人は文政に対してだけ、信仰にも近いような絶対的忠誠心を持っている。

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ヒカ みどの姉にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の姉のほう。以前、沖田の経営する店で働いていたことがある。優しいけど気分屋で、行動範囲が異常に広い。タレントのスザンヌに面影が似ている。

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みど ヒカの妹にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の妹のほう。とにかく気が強く、とにかく怒られるのが大嫌い。文政を呼び捨てにできる、数少ない女性の一人。タレントの北川景子に横顔が似ている。

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沖田臥竜

文政の兄弟分。通称"尼のブラザー"。この小説の語り手でもある。


生野のジュリー、大いに嘆くの巻


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《もうワシは頼まれても、ここでは唄ったらへんど、兄弟!》

 藪から棒にこんな事を言われても、「そうなん」としか思うことができなかったのだが、さらに文政節は続く。

《ワシのジュリーが天下一品なんは、兄弟もよう知っとるやろ! そんなもんシャバやろうが懲役やろうが万国共通やないか。それをここの耄碌した審査員共は分からへんらしいんや。シャバやったら銭もらわなマイク握らんワシがボランティアで慰問したったのに、もうワシは唄わへんどっ!》

 察するに刑務所の中で行われた工場対抗のカラオケ大会に出場したのだが、優勝できなかったのであろう。

 だが彼はやはりどこまでいっても彼である。解釈が強烈なプラス思考なのだ。

《多分あれやど兄弟。ワシも考えたんやけど、これは妬みやど。本が出て、ますます有名になってもうたワシに対する庶民の妬みや。有名人は辛いのぉ~。そのうち黒羽に移送されるんやないかと毎日ヒヤヒヤやがな~っ》

 黒羽刑務所と言えば、マーシーや清水健太郎が卒業した、いわば有名人御用達のムショのことである。

 だが案じるなかれである。黒羽刑務所はあくまで初犯刑務所である。バリバリの累犯で、歩く治外法権の文政がどう転んでも送られる訳がない。

 そもそも初めての務めから再犯刑務所に送られているではないか。

 まかり間違って文政を黒羽に収容してしまえばどうなってしまうか。《兄弟、マーシーいとるやろ。あれ、ワシの弟にしたから、また覚えとったってくれよ》という現象が次々に起こってしまうだろう。

《なにぃー!? 出たらダルクにいくやとっ! 何を言うとんねん、ラッツアンドスターが泣くど。かまへん出たら、まつのガードしとけっ!》

 マーシーさんも迷惑である。

「何ぃ~! ワシのことを反目や言うとるヤツがいとるやとっ! もうええ、気分が悪なった。所長が頼んできてもワシは唄わんどっ!」

 共に過ごした大阪刑務所時代。カラオケ大会に出場しようとした文政が、他の工場からの出場者に「怖い」と言われ出場できなかったのである。

 その後、私は唄えなかった腹いせに二名独居で彼の歌を延々と聞かされる事になってしまったのだが......。

彼からの手紙を最後まで読み終えた私は現在、文政と共に獄中生活を余儀なくされている懲役たちを想った。

「えんえんとジュリー聞かされとんやろなっ」

 少しばかりだが、全く顔すら知らない懲役たちがしのばれたのだった。




(イラスト=山下ユタカ 文=沖田臥竜 写真はすべてイメージです)




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