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生野が生んだスーパースター文政 ──尼崎極道炎上篇──⑭

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 面会を終えると私はその足で本宅へと顔を出し、親分の姐さんに「明日、親分の代理で定例会に出席してきます」と挨拶したのだが、この時、姐さんからこんな事を言われたのだ。

「沖田さん、本家の定例会に行きはんのやったら、ヒゲは剃って行きなさい」と。

 その時には、(姐さん、いくらなんでもそこまでせんでええのと違いますか)と思ったのであるが、そこまでしなければならない神聖な場所であった。

 翌日、本家に向かうと代理出席でヒゲを生やしている者は誰もいなかった。

 心底、姐さんに感謝したのであった。


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「ええか、沖田。本家は独特の雰囲気があるから、その雰囲気に呑まれたらあかんどっ。兄弟の名前呼ばれたら、代理です!て大声で叫ぶぐらいでちょうどええからな」と心やすくして頂いてた叔父貴に言われ、挑んだ定例会では大広間に入室しただけで心臓は爆発してしまいそうになっていた。

 たった一言「代理です」というだけなのに。

 周りを見渡してみると、全員が世の人々から親分の称号を与えられた方々ばかりである。

 小さなバーを営みながら、細々やってまんねん、という顔ではない。確実に私がこの中で一番、金を持っていないことはある意味、一目瞭然であった。

 だけどだ。私も小さなバーの経営者の顔をしている訳にはいかない。

 何故ならば、私の懐事情がどうであれ、親分の名代で今その座布団に座っているのだ。

 顔くらいは涼しい顔をしておかなくてはなるまい。

 そんな事をあれこれ考えている時だった。

「親分入られますっ!」という声が大広間に響き渡り、ゆっくりとした足どりで、薄い紫の作務衣をきた本家親分が入室してこられ、私からみて一番奥の中央に腰をおろされた。

 私は最後尾からその光景を眺めながら、ついにオレもここまで来たか(全く来ていないのだけども......)などと思いながら、緊張と感慨が入り乱れていたのだった。

 すぐに出席が始まった。

「敬称は省略しますっ!」と断わりを入れてから名前を読み上げる叔父貴の早いこと。想像以上であった。

 私はそのスピードに合わせて「代理です」と心の中で連呼していた。

 代理です、代理です、と繰り返していくうちに、私は緊張の余り軽くショートしていたのかもしれない。

 いつの間にか、心の叫びが「代理です」から「同席です」に変わってしまっていたのだ。

──同席ですっ! 同席ですっ! 同席ですっ......、同席ですってなんやねんっ!!!──

 これには私も酷く動転してしまい、頭が真っ白になってパニック状態に陥りかけていた。

 そこに私の親分の名前が読み上げられた。

 結果から話そう。

 私の口から出た言葉は「代理ですっ!」である。




 この後の事は、極度の放心状態だったためにあまり覚えていない。

 気がつけば、私は事務所に戻っていて、当番者がいれてくれた水を一気に飲み干していたのだった。

「どないやった、本家の定例会は?」と他の幹部に訊かれ「寿命が三年は縮まった......」と答えソファーに身を沈めながら、瞼を閉じた。

──文政の兄弟に聞かせたら、また爆笑するやろなっ──なんて思いながら......。


(イラスト=山下ユタカ 文=沖田臥竜 写真はすべてイメージです)




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