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生野が生んだスーパースター文政 ──尼崎極道炎上篇──⑭

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大阪市生野区。通称生野。
私には、この生野という街に兄弟分がいる。兄弟の名前は文政(ブンマサ)。年は私より2つ年上の41歳。生野にとどまらず、大阪のアウトロー達の中では文政の名前は広く知れ渡っている。カタにはまることのないそのスタイルは、まさに天衣無縫。バクチと女をこよなく愛し、性格は底抜けに明るく、誰が相手であっても決して物怖じしない。まさに愛すべき男なのである。これから、そんな文政の兄弟について話していくつもりなので、少しの時間お付き合いいただきたい。(沖田臥竜)


おもな登場人物


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文政 いい女とタブバクチを心から愛する、ご存知"生野のブンマサ"。左目は17歳の時に失い、義眼を入れている。相手がどんな大物であろうが、おおむねタメ口で通している。現在は鳥取刑務所でおつとめ中。

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バッテツ 文政の右腕。仕事もせず、ケンカに備え常時筋トレしているという通称"ステゴロキング"。190センチの長身から繰り出されるパンチは脅威そのもの。口癖は「あのねあのね兄弟、こいつら全員しばいていい?」

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まっちゃん 文政の忠実な舎弟。160センチ55kgという小柄な体格をいかした車上荒しのスペシャリスト。その腕前には大阪中の裏社会からスカウトが来るほどだが、本人は文政に対してだけ、信仰にも近いような絶対的忠誠心を持っている。

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ヒカ みどの姉にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の姉のほう。以前、沖田の経営する店で働いていたことがある。優しいけど気分屋で、行動範囲が異常に広い。タレントのスザンヌに面影が似ている。

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みど ヒカの妹にして、大阪最強とも噂される光合成姉妹の妹のほう。とにかく気が強く、とにかく怒られるのが大嫌い。文政を呼び捨てにできる、数少ない女性の一人。タレントの北川景子に横顔が似ている。

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沖田臥竜

文政の兄弟分。通称"尼のブラザー"。この小説の語り手でもある。


緊張の本家定例会の巻


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 激しい夏が過ぎさり、吹く風の中に秋の訪れを感じ始めた頃だった。予期せぬ事態が、私の所属する組織に起きた。

 私の親分と、上司となる若頭を、県警が同時に逮捕したのだ。

 そのときの県警のはしゃぎようといったらなかった。

 確かに県警にとっては、大金星なのであるが......。


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 当時、私の組織内での役職は、若頭補佐であった。

 出頭する直前に、親分から「沖田、ワシが戻るまで事務所の事は頼むぞ」と言われたのだが、この一言で、二人が戻って来られるまで、私が組織の責任者となったのだ。

 はっきり言って、荷が重い。責任者を任されるという事は、だ。親分の名代で本家の定例会にも出席しなければならないし、様々な責任がのしかかってくるのだ。

 それを考えただけでも、内心クラクラしていたのだが「クラクラします!」なんて言える訳もなく、私は「はいっ」と応えたのであった。

 さて、親分と若頭を挙げたことではしゃぐ県警が次なるターゲットを絞り始めた。

 わざわざ私の所属する組織の名前をつけた、☓☓組壊滅作戦というプロジェクトまで、ご丁寧に作ったほどだ。

 そして、次なるターゲットに選ばれたのが、他でもないこの私であった。

 まずは本部だけではなく、私が経営していた飲食店まで徹底的にガサをかけられ、毎日のように言いがかりをつけてられては、警察署へと足を運ばされるハメとなった。

「だから自分は何も分かりませんてっ」というのが、私の口癖であったのだが、それに対して相手さんの口癖は「お前にも二、三年は懲役行ってもらうからのぉ」というものであった。

 そう言われても「だから自分は何も分かりませんてっ」と繰り返していたのだが、内心はかなり穏やかではなかった。


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「兄弟~、えらい人気者になっとるやないか~っ」

 本家の定例会を明日に控えた前日。私が留置場に座る文政を訪ねると、彼はアクリル板の向こうで嬉しそうに口を開いた。

「なんでやねんな。人気なんかあるかいなっ。人気あんのは、兄弟やろがっ」

 もちろん文政は否定しない。

「当たり前やないか。ワシの人気はいつでもうなぎ登りや。やけど、兄弟も隅には置けんがな。なんでもケムシまでが兄弟を狙っとるらしいからのっ~」

 何故、この男はこんなにも嬉しそうなのであろうか。

 ケムシ。名前を聞くだけでも目眩を覚えるそのネーミングの主は、大阪裏社会の不良をいじめることを生き甲斐にしている府警の刑事だ。

 尼崎はギリギリ兵庫県であることを、マムシは忘れてしまったのであろうか。

「期待しとんで、兄弟~」

 終始笑顔の文政に、私の目眩は一層激しさを増したのであった。