>  > シリーズ"しばき隊の真実"第四回「暴力集団と言われたしばき隊の功罪 ~離れていく人々~」
義賊か、それとも悪党か。 “しばき隊”とは何だったのか?

シリーズ"しばき隊の真実"第四回「暴力集団と言われたしばき隊の功罪 ~離れていく人々~」

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野間易通氏とたもとを分かつ


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野間易通氏と著者 著者提供


 そのことを私と同じように昔から在特会にどうカウンターをしていくかを模索していた野間易通氏も考えていたはずだ。だが、C.R.A.C.を立ち上げた2013年10月頃から、徐々に野間氏はカウンターのイメージを気にするようになっていった。理由としてのひとつは、ヘイトスピーチを対策する法規制も国会で議論されるようになり、しばき隊が政治家へのロビイングなどもしていたからだろうが、それまで一緒に差別主義者を待ち伏せしていたりしたので今更何を言っているんだと思った。とにかく、初期のカウンターの頃と違い、ダーティーさを消し去りたかったのだろう。

 それから私との路線対立が強くなっていった。以前からも、野間氏からは私を管理下に置きたいような素振りを感じていたが、C.R.A.C.にいても私は自分が思うがままに動いていた。そんな中で、私みたいな反社会勢力に見られても構わないという人間は徐々に邪魔になっていたのだろう。後に私は元『関東連合』最高幹部との繋がりを問題視され、C.R.A.C.メンバーから糾弾され自主脱退をすることになるのだが、元々、野間氏の内心で私のことが邪魔になっている雰囲気はしていた。私もいつ辞めようか考えていたぐらいだ。

 しかし、野間氏の人を懐柔する力は天才的だと思わせる部分があり、ツンデレではないけれどtwitterなどのインターネット上では頭にくることはあれど、実際に電話したり会って話してみるとどこか憎めないところがあったので離れられないでいた。ただ、その件ばかりは話は別だ。過去に悪行をおこなってきた集団や人間がカウンターにいたり、もしくは交友を持ってはいけないのであれば、脛に傷ある経歴のメンバーが多い男組の存在否定にもなる。私からすれば、引くわけにはいかなかった。そもそも私の交友関係を昔から知っていた野間氏が、それまで共にカウンターをしていたことすら間違いになってしまうではないか。矛盾ばかりである。

 私が一番疑問を抱いたのは、野間氏がC.R.A.C.になってから特定秘密保護法反対、安保法制反対、安倍政権反対の行動をC.R.A.C.としておこなうようになったことだ。それらの運動をC.R.A.C.でやるとは野間氏から何も聞いていなかった。聞いていなかったメンバーは私だけではなかった。C.R.A.C.は、差別主義者にカウンターするというひとつの目的で集まった集団だと思っていたし、野間氏が勝手に、独裁で物事を決めたら怒るだろう。単純に「在特会みたいなものを許せない」と集まったメンバーはブチ切れるはずだ。

 事実、このことでC.R.A.C.から離れていったメンバーはいた。私が思うに、野間氏はたぶん「ANTIFA(反ファシズム)」の大規模な大衆運動構想をしていたのだろう。安倍晋三政権をファシズム政権とし、抗議をしていくC.R.A.C.。2015年にメディアにも大きく取り上げられ話題となった、安保法制に反対する学生たちの集団『SEALs(シールズ)』に、野間氏が与えた影響も間違いなくあるだろう。野間氏はしばき隊の戦力を、C.R.A.C.でおこなう反ファシズム運動に利用しようと考えたのではないか。

 けれども、私は野間氏の構想は失敗すると思っていた。


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SEALs(シールズ)国会前抗議 毎日新聞より


 確かに野間氏には、脱原発の金曜官邸前抗議行動に20万人とも言われる参加者を集めた『首都圏反原発連合』の運動の実績がある。だが、しばき隊によってクリーンな野間氏のイメージはインターネット上で叩かれて完全に崩れているし、そもそも政治はそんなに綺麗事だけで上手くいかない世界だ。支持率の高い安倍政権は巧みな動きをしているし、むしろ政治家へのロビイングなどは、右翼の私の方が人情味があり、清濁併せ持つ交渉もでき得意だと思う。よく、野間氏は会う度に「左翼になれ」など意味不明ことを言ってくるが、私からすればしばき隊は"ゴロツキが巨悪を討つ"という右翼的な集団であり、むしろ野間氏が右翼になった方が存分に自身の持つ能力を発揮できるだろうと感じる。何にせよ、C.R.A.C.から私を切り捨てたことが、野間氏の最大のミスであろう。

 やがて、野間氏やC.R.A.C.は、同じく反差別の想いを持つ人々をネットで激しく攻撃し、吊るし上げるようになっていった。

 野間氏は、広く社会的に認められる反差別の運動を志したのだろうが、それとは裏腹にインターネット上で自身らと異なる考えの人間に対して過剰な抗議をし、排除をする、暴走したカルト集団だと多くの方々に受け止められていった。しばき隊がおこなってきたカウンターが成果を出し、次のフェーズに移ったのは私自身分かっているが、あえて敵を作り反感を撒き散らすようなやり方は理解できない。本来の敵を見失っているのではと私には感じる。

 そもそも人間的に私と野間氏は合わなかったのだろう。何となく感じたことであるが、例えば食事をする際も、私はガード下の小汚い居酒屋などで酒を尋常じゃないぐらい飲みたい方だ。野間氏は真逆でオシャレな喫茶店などに好んで行きコーヒーをキザにすするような感じだろう。性格の違いでいえば、分かりやすく言うと、喧嘩をしたとしよう。喧嘩後に、私は喧嘩した相手と互いに河原で寝転びながら夕日を見て涙を流しつつ握手をして叫び仲良くなりたいタイプだ。野間氏はそうではないらしく、そういった青春映画のような展開には反吐が出てしまうタイプらしい。

 しばき隊について、伝説として語り継がれる鼠小僧や石川五右衛門のような義賊みたいな存在であるべきだと私は考えていたのだが、野間氏は全く異なりオシャレでクリーンな新しい社会運動集団にしたかったのではないだろうか。(以下続く)




山口祐二郎
1985年、群馬県生まれ。歌舞伎町ホストなどを経て、新右翼「統一戦線義勇軍」幹部に。2007年に防衛省襲撃事件、2012年に東電会長宅前断食断水ハンストを起こし脱退。現在は、「全日本憂国者連合会議」議長、「憂国我道会」会長。作家・活動家として活躍。 著書に『ハイリスク・ノーリターン』(第三書館)、『奴らを通すな!』(ころから)がある。

山口祐二郎公式ツイッター  https://twitter.com/yamaguchiyujiro