>  > シリーズ"しばき隊の真実"第ニ回「~しばき隊誕生前夜~ ネットから生まれた在特会」
義賊か、それとも悪党か。 “しばき隊”とは何だったのか?

シリーズ"しばき隊の真実"第ニ回「~しばき隊誕生前夜~ ネットから生まれた在特会」

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"しばき隊"はどうやって生まれ、どこを目指し、なにを行ってきたのか──連載第二回の今回は"しばき隊"が誕生するまでを当事者・山口祐二郎が振り返っていく。


2007年、ひとつの「市民団体」が産声をあげた


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街頭演説する著者(2008年)


 2016年6月23日。イギリスでは欧州連合(EU)を離脱すべきかどうかを決める国民投票がおこなわれた。結果として離脱の票が上回り、イギリスのEU離脱の方向性が強くなった。すぐにイギリスがEUを離脱するわけではないが、大混乱の様相を呈している。

 また、2016年11月8日。米国大統領選開票の結果、ドナルド・トランプ氏が、第45代米国大統領に就任することが決定した。トランプ氏といえば、ヘイトスピーチ(差別扇動表現)。メキシコ移民、黒人、女性、イスラム教徒、身体障がい者などへのヘイトスピーチが話題となっている人物だ。メキシコとの国境に壁を作るとまで豪語している。他の政策はともかくとして、なぜこのような差別主義者が米国の大統領になれたのか。それは残念ながら、この社会には昔も今も、世界的に排外主義と差別をする空気が根強く蔓延しているからだ。

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『マンガ嫌韓流』著/山野車輪 刊/晋遊舎

 それは日本も他人事ではなかった。日本では2004年、私がよく似ていると言われるペ・ヨンジュン氏(ヨン様)が主演の韓国ドラマ『冬のソナタ』が大ヒットして韓流ブームが起こった。しかしその翌年2005年にに、山野車輪が『マンガ嫌韓流』を刊行する。韓流ブームに異を唱える層に支持された。そして私が右翼団体『統一戦線義勇軍』に入会した2007年頃には、既存の右翼団体とは異なるネット右翼と呼ばれる人間たちがメディアでも話題になっていた。ネット上の2ちゃんねるなどの匿名掲示板には、韓国人や中国人への差別的な書き込みが溢れていた。姿の分からないネット上の差別主義者たちは、四六時中ヘイトスピーチを書き込んでいた。

 やがて、ネット右翼は街頭に出てくるようになってしまった。人種差別団体『在日特権を許さない市民の会(略称 在特会)』は2007年に結成された。在特会は、日の丸を掲げ、愛国者を自称し、ヘイトスピーチを撒き散らす演説会やデモをする。在特会は殊更に自分たちは市民だとアピールした。元々の右翼のイメージは世間からすれば良いものではないだろう。私自身、右翼団体にいて暴力団と変わらないイメージで見られることが多かった。事実、戦後の右翼団体は、ヤクザ組織の隠れ蓑的な部分があったり、ヤクザと右翼という二足の草鞋の人も結構いる。チンピラやゴロツキみたいな人も多い。日本を良くするために活動をしているのに、むしろ日本を悪くしているのではないかと思われている節がある。

だが、在特会はそうではなかった。市民団体を自称し、既存右翼のあり方を強く否定した。大きく既存右翼団体と在特会が異なったのは、厳しい縦社会の序列や組織の掟がなかったことだろう。既存右翼団体のように、組織の先輩方に口うるさく怒られるわけでもなく、このデモに参加しろなどという活動ノルマもない。高額な会費もない。在特会の会員になるのも、在特会の公式サイトからメールを送るだけ。これだけでネット会員になれるのだ。会員にならなくても、活動に参加をすれば歓迎され人間関係もできる。既存の右翼団体より入会へのハードルが低く、すこぶる活動に参加しやすい体制だ。