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東京ピカレスク 新章~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ ピカロの集金

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新章「サイバーアウトロー」連載第39回 ピカロの集金


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

あらすじ
いよいよ架空請求詐欺会社を開業することになった三井と鹿児島


「はい、三井先輩。これ、3日ほど前のウチの一番新しい顧客データです」
 頼りになる後輩・金沢は、A4サイズの大型封筒をオレに手渡した。念のため、封筒の中をあらためてみると、透明のケースでカバーされたCD-Rが2枚入っている。

「軽く5万件はあると思いますよ」
 金沢は、オレの耳元でささやくようにいった。オレは嬉しさのあまり、その場で金沢の両手を握った。

「金沢、ありがとな!」
 オレは、金沢に最大限の喜びを表した。

 どんな商売でも最初が肝心である。開業早々つまずくと、それから先が読めなくなって、静観、停滞、不安、迷い、焦りなどがつきまとう。せっかく、鹿児島を誘って始めた事業なのだ。オレとともに稼ぎ、彼の喜ぶ顔が見たかった。そんな矢先、金沢はデータの横流しに成功したのである。

 4億円売り上げるために、雑誌等の広告費に最低1億円は使っているはずだ。そのデータを、横流してくれた金沢。

 オレは、成功を確信していた。

(これで、オレと鹿児島のTwoTop(ツートップ)体制の最初のスタートから、先生を驚かせてやることができるぞ)
 オレは金沢から受け取ったCD-Rをジッと眺めた。

 オレたちのような架空請求詐欺の業者は、いかに生きたデータを手に入れるか否かが成功のカギだ。月間売上4億円を誇る金沢が番頭を務める、出会い系サイト『タイランドK5』の最近のデータを入手する。これが、いかにスゴいことか、オレにはわかっていた。

 オレは早速、CD-Rをパソコンに入れ、携帯を接続した。

「先生。覚えといてよ。この携帯をマクロ(=PCのプログラム)で操作すれば、5万件なんてアッという間に送れるから」

「ふぅ~ん......」
 向学心が人一倍強い鹿児島は、オレの肩越しにパソコンの画面を食い入るように見ている。

(さすが、先生だな)
 オレは鹿児島の真剣さに、心の中で感動していた。

「これで、OK! あとは、この文面を添付して送るだけだよ」
 オレは、適当に考えた請求文を鹿児島に見せた。

「なになに......警告、貴殿は......」
 鹿児島は目を細めて、デスクトップ上に表示された文面を見た。

『警告! 貴殿は平成○年○月○日、弊社運営サイト○○を利用されましたが、未だ支払いが成されておりません。本メール到着三日以内に下記口座に振り込まれますよう、宜しくお願い申し上げます。もし、期日内に振り込みなき場合は、法的手続きを取らせて頂きます』

 鹿児島は、請求文のテンプレートを黙って読んでいる。

「はぁ!? これでホントに振り込むヤツらがいるんだねぇ~。師匠、いまだに信じられないよ」
 鹿児島は、首を左右に傾げながらいった。オレは、そんな鹿児島がかわいらしく、ほほ笑みさえ浮かべた。

(スゴい金額が全国各地から振り込まれてくるので先生もビックリするぞぉ)
 オレ自身、小さく始めた架空請求詐欺だったが、毎日何十万、何百万もの大金が振り込まれてきたのには驚かされていた。

「さぁ、先生。金額はいくらに設定しようか」
 オレはニコニコ笑顔で、鹿児島に尋ねた。