>  > 福島刑務所のラジオから流れた「はじまりはいつも雨」(チャゲ&ASKA)
元四次団体組長・張恭市a.k.a.喜多方の帝王がASKA報道を受け緊急寄稿!

福島刑務所のラジオから流れた「はじまりはいつも雨」(チャゲ&ASKA)

この記事のキーワード:
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

衝撃の、ASKA容疑者逮捕の報道から2日。テレビをつけるたびに流れるASKA容疑者の歌声に、複雑な心境になる方は少なくないはず。本サイトでエッセイを好評連載中の張恭市さんもそんな一人。今回の事件について、急きょエッセイを書きおろしていただきました。張恭市・緊急寄稿「ヤクザとチャゲ&ASKA」をご覧ください。


cho_20161130_03.jpg


 雨が降り続く、梅雨時期の免業日。若い衆の下手打ちで共犯ととられ、福島刑務所にて一年半懲役を務めていた時の話だ。

 朝からジメジメして、ハッキリしない天気が2~3日続いており、気分も晴れない。

「こんな時、クーラーの効いた部屋でコーラでも飲みながらゆっくりしていたいなぁ......」

 窓の外で降り続く雨をぼーっと見つめながら、そんな事を考えているとラジオが流れてきた。

 刑務所では、作業をすることがない土、日曜日、祝日(いわゆる免業日と言われる、作業が免除される日)の午前9時半からFMラジオを視聴する事が出来る。

 その日はリスナーからのリクエスト番組が流れており、色んなジャンルの曲が流れ、音楽の大好きな私はラジオが流れてきたことにより、晴れない気持ちが少し緩和されてきた。

 そんな中、ある曲がリクエストされて流れた瞬間、同房にて生活していた茨城の松葉会系の現役の人間で、いつもは無口でおとなしい高野さん(仮名)という人が流れてきた曲に反応し、俺に話しかけてきた。


「いやぁねぇ、私この曲を聴くと、いつも思い出してしまう事があるんですよねぇ」


 現役の人間と言いながら、声は甲高く、見た目も御世辞でもとてもヤクザには見えなかった高野さんは、そんなことを話ながら私の隣に座って話を続けた。

「今回の逮捕前に私、一度逮捕されてるんですよね。その時は執行猶予で出られたんですけど。まぁ、その時の弁当(=執行猶予)も一緒に今、務めてるんですけどね」

「ははは」と愛想笑いを返すと、高野さんは話の本題に入ってきた。

「当時、付き合ってる女性がいましてね。その女性、とてもヤクザとは付き合うとは思えないほど、純粋で素敵な女性でしてね。本当に出来た女だったんですよね」

(......なんだ、ノロケ話か!?)と思って相槌を打っていたら、間髪おかずに話をしてきた。

「順調に付き合っていたんですけど、私の不始末で当時逮捕されてしまいましてね。その時に彼女、私の事を待っていてくれたんですけど、私が拘留中に癌になってしまいまして......」

 その頃になると、私だけでなく、同房にいた懲役全員、その話に夢中になって聞いていた。


「癌になりながらも、病院に通いながら私の所にいつも面会に来てくれていたんですよ。

でもね、不思議なことに、娑婆にいる時にその女性と会っていた時も、面会に来てくれる時も、必ずと言って良いほど、雨になるんです。

お前、雨女だろ?なんてからかってましてね。」

 その後に壮絶な話を聞くこととなる。

「警察署の留置場から拘置所に移送されて裁判待ちだった時のことです。

その日も外は朝から雨が降っていて、もしかしたら雨も降ってるから、彼女面会に来てくれるだろうなって予想してたんですね。

その時に刑務官が私の部屋の前に来て、ドアを開けたんですよ。

お、面会の迎えにきたな? そう思って部屋から出ようとすると、部屋の前に来た刑務官からこんなことを言われたんですよ。


『お前の彼女さん、今日、亡くなったそうだ』って.........」


 私が過去、三度の刑務所での収容生活中、一番恐れていた事。それは、最愛の人間が身動きのとれない収容期間中に亡くなってしまうことだった。

 もし、そうなってしまったら、刑務所の中にいる以上、何があろうと外に出ることは不可能で、最後の別れをする事ができないから、それだけはあってほしくないと常々思っていた。

 もし、そんなことになっていたら、間違いなく私は狂っていたと思うし、もしかしたら今、こうしていれなかったかも知れない。

 その苦い体験を高野さんはしてしまったのだ。

「だからね、今日みたいな雨が降り続く日にこの曲を聴くと、彼女のことを思い出してしまうんですよね。亡くなった彼女と、いつも聴いていたこの曲。

出だしの歌詞から、俺達みたいなだねっていつも二人で笑っていて......」


そう言って高野さんは、ラジオから流れてくるASKAの『はじまりはいつも雨』を人目を憚らず泣きながら聴いていた。


君に逢う日は 不思議なくらい雨が多くて♪


 その話を聞いた同房の皆全員、高野さんとともに涙した。

 外は雨が降り続いていた。

『はじまりはいつも雨』を聴くと、私は今でもその時の高野さんの話を思い出します。




 最後に、ASKAさんへ。

 貴方の曲は、たくさんのファンに夢と希望、素敵な思い出を与えてきました。

 我々のようなヤクザ者にでさえ。

 だから、また素敵な曲を書いて、たくさんのファンの前で素晴らしい歌を披露してください。

 そう願っています。




張 恭市
ちょう きょういち 元、某広域暴力団の三次団体幹部。四次団体組長。前科6犯。20代半ばから30代半ばの大半を、塀の中で過ごす。韓国人の父親、日本人の母親を持つハーフ。7年前に約20年所属していた組織から足を洗い、今は地元で数々の経営に携わり、東日本大震災後、復興支援のチャリティーイベント主催者、ボランティア活動、芸能界とのパイプを利用し、復興ライヴ興行等、幅広く活躍している。