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『聖域 ~関東連合の金脈とVIPコネクション』 ヒット記念書きおろし特別エッセイ 「最強とは何か?」

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先月末の27日の発売と同時に注文が殺到、長らく品薄状態が続いていました話題の本『聖域 ~関東連合の金脈とVIPコネクション』ですが、ようやく大増刷が決定いたしました。これまで入手できず、もどかしい思いをされていた方も少なくなかったのではないでしょうか。そこで、お詫びというわけではありませんが、著者である柴田大輔氏がR-ZONE読者のためだけに、特別にエッセイを書きおろしてくれました。『聖域』外伝ともいうべき2000年代東京不良群像をお楽しみください(編集部)


特別エッセイ「最強とは何か?」


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wikipedeia「渋谷センター街」(リンク


 僕が、まだ起業したばかりの頃のことだ。いつものようにセンター街にたむろし、スカウトマンを取り仕切っている後輩たちと雑談を交わしていた。

 当時、それはごく日常の光景で、関東連合にとっては普段通りの、のどかなセンター街だった。

「キコキコキコ......」どこからか聞こえる金属のこすれ合う音が、次第と大きくなってきた。音の方向に目をやると、やたらと小さいマウンテンバイクのような乗り物に乗って近づいて来る者がいるではないか。

 もう秋も終わり、肌寒さすら感じる季節だというのに、近づいて来る者は短パンビーサンにタンクトップという姿で、露出した肌からは良く言えば和洋折衷、普通に見れば支離滅裂なタトゥーがのぞいている。

 片方の手には親指を除いてS?DAと彫られている。本人の名前を省略したニックネームだ。

 その者は僕を発見するやいなや、そのおもちゃのような自転車をこぐスピードを上げて僕に近づいてきた。

「おお! 大じゃねえか!?」

 僕は絶望に近い気持ちになった。(最悪な人物に会ってしまった......)と思った。

 S?DA先輩は僕の暴走族のモデルとなったような先輩で、小学生の頃から集会に連れて行ってもらい、バイクの後ろに乗せてもらっていたような先輩だ。


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 所属していたチーム名は三鷹スペクターだが、実際に正式な現役をまっとうしたかは曖昧で、好き勝手に吉祥寺にチーマーを作ったりしていた。

 基本的には一切働かず、後輩やどこかの不良からの恐喝か窃盗で生きていた

 不良で言うところのいわゆるキチガイ系のキャラで通っていたのだが、実のところ計算高くて勘ぐりやすく、警戒心も人並み以上に強かった。

 それは常習的な薬物の影響もあったのかもしれないが、その割に肉体はバキバキに鍛え上げられていた。

 当時の、僕の拙い表現力で形容するならば、その身体は「仮面ライダーのようだった」。

 作家デビューした今の僕なら、こう書く。

「仮面ライダーそのものだ」

 ケンカをするために作られた身体とはこういうものなのだ、と当時は憧れたものだった。