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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 新章第34回 出会い系サイトを喰いものにするピカロ

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新章「サイバーアウトロー」連載第34回 出会い系サイトを喰いものにするピカロ


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
援デリ業者・品川から80万件の顧客データを買い叩いた三井だが......


「これ、見ておくんなはれ。この中に、ウチのサイトの常連客に架空請求をだして、自分のとこでカネをガメてしまおうというヤツがおるんですわ」
 大塚に本拠地を持つ、都内でも3本の指に入る出会い系サイトの大手『サイト斉藤くん』のオーナーである桑江(くわえ)明(あきら)はパソコンの顧客リストを指で示しながらいった。

「ふ~ん......」
 桑江のいう架空請求とは、出会い系サイトに客として入りこんで顧客のメアドをGET。そこの常連客になりすまして、サイトの利用代金を請求する詐欺のことである。

 オレは、画面上に表示される無機質なメアドの羅列を見ながら、静かにためいきをついた。オレが援交デリ業者の品川から買い叩いたメアドのデータを、桑江オーナーに160万円で売ったのが半月ほど前のこと。

 関西弁を話すが、チャキチャキの江戸っ子である桑江は、実にキップよくデーターを買ってくれた。これかも良いお付き合いをと約束を交わし、気持ちよく商談は成立。オレは桑江社長こそが、開業したての自社スマイルカンパニーの成功の礎となるべき業者であることを確信していた。

 当時の出会い系サイトは、時代の寵児として既存の風俗業を駆逐する勢いであった。なによりもプロの風俗嬢より、素人のOLや女子大生などと遊べるという噂が話題となって、新しい時代の風俗として爆発的な人気を呼んだ。

 実際、この出会い系サイト『サイト斉藤くん』は週刊誌月刊誌に多額の広告費を支払い、常連客を集めるのに奔走していた。盟友・鹿児島から聞いた話では、その広告費は月額1億円にも上ったという。まぁ、それだけ投資しても、月に4億円の売り上げがあがり、広告費等必要経費サクラ等人件費を引いても、純利益月額1億5千万円を下らなかったという。

 この最大の支出金である広告費を、オレたちのようなデータ屋を利用すれば1/3以下に抑えることができる。そして、彼はかつての同僚で顔の広い鹿児島に相談。鹿児島がオレを紹介したのである。

 たとえ広告費1億円の1/3でも、オレがデータを売れば会社の利益は3千万円を下らない。オレは歓喜し、鹿児島の友情に感謝した。鹿児島は当然のことをしたまでだといわんばかりの表情で、オレが喜んでいることを不思議そうに見た。だが、鹿児島には当たり前のことでも、たとえ友だとしてもこれだけの協力をしてくれる人物はそうそういない。オレは鹿児島のためだったら、命までも捨てることができると覚悟した瞬間だった。

 それから、1週間後のことである。

「アンタから買うたデータに、ウチから広告メールを送ったら、ここ1週間で客が逆に減っているんですわ」
 オーナーの桑江社長からクレームというか、苦情の電話の第一報が入ったのである。