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ヤバすぎるアンダーグラウンドエッセイ from 東北

元四次団体組長・張恭市の「喜多方の帝王、刑務所を行く」

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とある大手暴力団(日本でいちばん有名なあそこですね)からスッパリと足を洗い、現在は被災地復興のため日々汗を流す「喜多方の帝王」こと張 恭市。そんな福島在住の張が被災地の現況から刑務所の実態まで、ヤバすぎるリアルな話を大いに語り尽くします!


出所したら、その足で向かう場所はもちろん......


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イラスト/筆者


 平成20年12月30日に3年間の最後の務めを終え、晴れて満期出所した私が、放免祝いで出迎えにきた若い衆の車に乗り込み、まず真っ先に向かったところがコンビニだった。

 なぜ、コンビニなのか?

 塀の中にいる間、買い物は自由には行えず、全て『願箋(がんせん)』という紙に書いて刑務官に提出し、留置してある自分のお金から購入時にお金を差し引いて買ってもらわなければならないシステムになっており、収容中はよほどの事がない限り、現金を手にとって見ることがない。

 なので、長期の刑に服していた者なんかは、自分でお金を持って買い物をするという観念がなくなり、それでは社会に出て支障をきたすとのことで、出所前に刑務官付き添いのもと、近くのショッピングセンター等で買い物の練習をさせられるほど自分で好きなものを自由に買うという行為が自分の意思でできなくなってしまうのだそうだ。

 あいにく、私はそこまでになるほどの長期刑を務めることはなかったので、とりあえず出たら好きなものを好きなだけ買いたいと考えていて、その欲望を叶える場所として、刑務所近くにあるコンビニに立ち寄ってもらい、好きなだけ好きなものを買いたいと出所前から手紙で出迎えに来る者たちに伝えておいてもらっていた。

 出所当日、現役のヤクザだった私は、若い衆達の出迎えも考慮した上で刑務所周辺の住民への配慮も考え、早朝出所を希望し、通常の午前8時30分ではなく6時30分に出所することにした。

 久し振りに囚人服から自分の私服に袖を通し、長年使っているCHANELのエゴイストプラチナムの香りがした瞬間、一気に娑婆へと戻らされる。

「いよいよこれで俺は塀の外へ出られる!」

 正門には若い衆と若い衆の女、そしてお袋が出迎えていた。

 当時、付き合っていた私の女は迎えには来ていなかった。

 収容されている間に他に男を作り、私のもとから離れていたのだった。

 しかし、その時は離れていった女への未練より、まずはコンビニに走ることが先決だった(笑)。

 若い衆がハンドルを握る車の後部座席に身を沈める。拘留中、一度も乗り物に乗っていなかった私は、ジョギング以上のスピードで目の前を通り過ぎる景色を何年かぶりに見たこともあり、恐怖で身体がこわばってしまっていた。

 久し振りに乗る車の体感速度が、通常の人より数百倍に感じられていたに違いない。

 コンビニに到着するまでの間、以前に私が使っていた携帯電話を母親から受け取った。

「こんなに携帯って小さかったっけ?

っていうか、携帯ってどうやっていじるんだっけ?

 お金同様、大半の懲役は出所後、久し振りに手に取って見る携帯とお金を見て、そのサイズに驚くという。

"中"で思い描いているサイズより、小さく見えるのだ。

 そんなことを考えている間にコンビニに到着し、緊張しながらコンビニの中に入った。