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新章突入! 東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第30回 新たなピカロ

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『師匠』と『先生』コンビ


「いいか、鹿児島。コイツは三井といって、鈴彰グループのキレ者だ。初対面の時から生意気なヤツでよう、オレに歯むかってきてボコボコにされた男だ。そんなヤツだから仕事がデキるだけじゃなく、肚も座っているし根性もある。パソコンだけじゃなく、人生の先輩としていろいろ教えてもらえ」
 秋山は、オレとの馴れそめを語る。

「はい!」
 鹿児島は、元気よく返事をした。

 元来が素直な性格なのだろう。秋山の話にも、屈託のない笑顔で答えていた。初めて会ったというのに、オレは鹿児島という青年に好感を持っていた。

 それからというもの、オレは終業後に鹿児島の事務所にいき、パソコンの設定からエクセルの使いかたまで教えた。

「ここで、コントロールとHを押し、変換する文字を入れると、全部を置換することできるんだ。鹿児島くん、わかる」
「はい、三井さん。さすがですね。これからは、三井さんのことを師匠と呼ばせてください!」
「よせよぉ、こんなことぐらいで師匠なんて呼ばれても、照れるだけじゃん」

 以来、彼はオレを師匠と呼ぶようになったのである。鹿児島はオレより若く、いわゆる『デジタルネイティヴ』世代であるにもかかわらず、アナログ人間だった。

 だが、もともとの頭がいいのだろう。乾いた砂が水を吸収するように、鹿児島は教えることすべてを吸収していき、自身の血肉とした。オレが彼に教えた基本的な知識だけで、その後は1人でパソコンを駆使し、すべての操作に対応できるほどになっていた。

「すんげぇ! こんな高度なスキル、いつ身に着けたの!」
 いつしか鹿児島は、ことパソコンに関してはオレ以上にデキる男になっていた。

「これからは、オレも鹿児島くんのことを先生と呼ぶよ」
「ハハハ......やめてくださいよ」

 鹿児島は、照れくさそうにいった。以来、オレは彼に敬意をこめ、先生と呼ぶようになったのである。 それからも、公私ともども鹿児島と付き合った。

 毎晩のように酒を飲み、将来を語りあった。酔うと、どちらかの部屋で泊りこんで爆睡を決めた。

 噛めばかむほど味が出るスルメのように、付き合えばつきあうほど彼の人間性に惹かれていく。彼もまた年上年下関係なく、オレを対等な友として慕ってくれた。オレたちは、『水魚の交わり』のような関係になっていた。

「オレにできることは、なんでも協力するよ。それに、いつかはオレも師匠と仕事がしたい。それが、本音だ」
 鹿児島は、真剣な表情でいった。

「ホント、先生! じゃあ、いつまでも待つよ!」
 オレはうれしさのあまり、鹿児島の手を握りしめた。

「必ず! 約束するよ!」
 鹿児島は、力づよくいった。

「ありがとう!」
 オレは、涙がこぼれそうだった。

 だが、このオレの誘いが、のちに鹿児島を長い懲役にいかせることになる。悪魔のささやきだった。


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-to be continued-   

※写真はイメージです