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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第21回 Jリーグに群がるピカロたち

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連載第21回 Jリーグに群がるピカロたち


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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あらすじ
順調に仕事を進めていた三井は倒産したスポーツグッズの債権者集会に向かった。そこで再び〝あの男〟と対峙することになった。


「ねぇねぇ、三井くん。今度の水曜日の夜、空いてるぅ」
社長の牧川に誘われ昼食をごちそうになり、会社に戻ってデスクに座ったオレに菜摘は話しかけた。

相変わらず腹にズンと響く、ドスの利いた声だった。
牧川に奢ってもらった高級焼肉店のカルビが、菜摘の低いバスの音響で胃袋の中で踊っていた。

「はぁ、水曜日ですか」
オレはスケジュール帳をパラパラとめくった。

「多分、なにもないと思いますが......なにか、あるんですか」
オレは菜摘に問い返した。

「実はねぇ。これ!」
菜摘は、うれしそうに小さな紙切れを持って立ち上がった。

「やっと手に入ったの。東京ヴァーチャスと横浜シンドラーのチケット」
菜摘が手にしていたのは数年前発足した、サッカーJリーグの人気を二分するチームの観戦チケットだった。

「サ、サッカーですか......」
オレは訝しげに答えた。

今からおよそ23年前、1993年カタール・ドーハのアルアリスタジアムで行われたサッカー国際試合の日本代表VSイラク代表戦で、FIFAワールドカップ初出場に近づいていた日本が終了直前で同点にされ、最終的に敗退した。

俗にいう、『ドーハの悲劇』である。

そして、この年にJリーグが発足し、日本中に空前のサッカーブームが巻き起こった。

過去、日本は1968年(=昭和43年)メキシコオリンピックで、銅メダルを獲得している。
それでも、日本国内ではサッカー人気は盛り上がらなかった。

だが、日本人の判官贔屓というのだろうか。あと一歩というところで敗退した、悲劇の日本サッカー界に多くのサポーターが感銘し、以後バブルのようなサッカーブームが巻き起こったのである。

菜摘も、そんな中の1人だった。
ただ、オレはサッカーにはまったく興味がなかった。

「菜摘さん。もしかして、サッカー好きなんですか」
「ピンポ~ン!」
菜摘は、満面の笑みで答えた。

「ひとりじゃツマんないから、一緒にいこうよ。終わったら、赤ちょうちんで生ビールと焼鳥。そして、サッカー談義で......」
菜摘は、当時でいうオヤジギャルだった。

オレは、サッカーは観たくないが菜摘とは飲みたかった。