>  > 国会で成立寸前の新しい法律「ヘイトスピーチ対策法(仮称)」を山口祐二郎が解説する
ヘイトスピーチハンター・山口祐二郎が珍しく本業に戻った

国会で成立寸前の新しい法律「ヘイトスピーチ対策法(仮称)」を山口祐二郎が解説する

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5月13日。特定の人種や民族へ差別をし煽るヘイトスピーチ(差別扇動表現)を対策する、ヘイトスピーチ対策法案が参院法務委員会で全会一致で可決。この後、衆議院へ送られ5月中にも衆議院で可決される予定。今国会で成立する見通しだ。なぜ、ヘイトスピーチ対策法が、この日本にできたのか。また、ヘイトスピーチ対策法はどのようなもので、きちんと差別を抑止する良い法になるのか。このことについて、書いていきたいと思う。(文=山口祐二郎)


児童相手にヘイトスピーチをかます奴ら


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wikipedeia「京都朝鮮学校公園占用抗議事件」より引用(リンク


 今回、なぜヘイトスピーチ対策法案が可決されたかというと、今までヘイトスピーチに現行法では対応できなかった現実があるからだろう。2009年12月からに起こった京都朝鮮学校襲撃事件※1は、人種差別団体『在特会』等の実行犯たちは、子供たちにヘイトスピーチを浴びせている。しかしながら、警察は見ているだけで止められなかった。それは差別言動を取り締まる法がないからである。

 実行犯の在特会等は現行犯逮捕をされなかった。さらには朝鮮学校側が事件発生後に威力業務妨害で刑事告訴をしても、すぐに警察は動かず対応しなかったのだ。結局、事件から8ヶ月も経った2010年8月に京都府警は実行犯4名を威力業務妨害罪などの容疑で逮捕した。それもヘイトスピーチに対する罪ではなく、朝鮮学校の授業を街宣で妨害をしたことが威力業務妨害罪になっただけなのだ。朝鮮人への差別意識から起こした犯罪、ヘイトクライムであるのにも関わらず、差別行為については問われていないのである。


長く不毛な法廷闘争を強いられて


 その後、2014年12月に、京都朝鮮学校襲撃事件民事訴訟において、在特会等に約1200万円の賠償命令と、学校周辺での街宣禁止を認めた判決が決定した。事件発生から約5年間という気の遠くなるような長い月日を経ての判決である。

 民事裁判は、弁護士費用や時間などをたくさん使う。膨大な費用や手間がかかるのだ。また、民事裁判では氏名や住所を晒すことになる。非常にリスキーなのである。差別を受けた当事者、朝鮮学校という被害者側にこんなことをさせてしまっていては駄目なはずだ。
 

コスメショップの女性店員と闘う日本男児


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写真はイメージです


 私はかつて、ヘイトスピーチをする在特会等と対立をしていなかった。在特会を批判をしていても、現場で物理的に止めようとはしないでいた。気にくわないけれど、放置していれば勝手に消えていくだろうと自分の中で言い訳をしていた。

 けれども、2012年頃から毎週のように新大久保コリアンタウンで、数百人という大人数でのヘイトスピーチをおこなうデモがおこなわれるようになっていった。さらには在特会等は"お散歩"と称し、ヘイトスピーチをしながらコリアンタウンの韓国コスメショップ店員などに嫌がらせをするのである。

 それでも警察は法(法的根拠)がないので、抑えることができない。目の前で差別をされている人がいるのに、見て見ぬ振りをするだけなのだ。私も恥ずかしながら同様であった。多くの方々が在特会を何とかしなければと考えていたが、なかなかどうにもできない現状であったのだ。
 

ヘイトスピーチデモ自体は下火傾向だが


 でも、このままではいけないと思う人たちはいた。2013年からヘイトスピーチをおこなうデモに対し、カウンターと呼ばれる抗議活動をする人々が路上の現場に出てきたのだ。カウンターは最初は少数であったが、差別主義者に立ち向かう勇気は伝染し、急激に増えていく。

 新大久保コリアンタウンでは毎週のようにカウンターが在特会等に対抗し、さらに機動隊が大量動員され騒乱状態になる。暴力事件まで発生し全国ニュースを賑わせるまでになる。ヘイトスピーチの問題はメディアで数多く取り上げられるようになり、社会問題となっていったのだ。

 そうして、多くの方々の差別を許さない行動により、現在は新大久保コリアンタウンではヘイトスピーチをおこなうデモがほとんどない状態である。だが、在特会等は下火になっても少人数で細々であるが、全国の至る場所でヘイトスピーチをするデモや街頭演説の活動は続けられてきた。ヘイトスピーチ対策法が成立後、ヘイトスピーチをおこなうデモがどのようになっていくかの動向が注目されている。