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東京ピカレスク~闇社会に君臨するピカロ(悪漢)~ 第8回

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連載第8回 人気タレントVSピカロその2


文/三井裕二・監修/坂本敏也・構成/影野臣直

これは実在するひとりの男の転落と更生の物語である。

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前回までのあらすじ
三井裕二(みつい ゆうじ)は、高利貸しの『ローンズまきかわ』で働くことになり、倒産した芸能事務所の債権整理として所属するヤンキータレント 小松崎愛の高級車を回収するべく駐車場へと向かった。


「おい、着いたぞ。ここが、小松崎愛が契約しているパーキングだ」
急ブレーキを踏んで、牧川はいった。オレは少し前にのめりこみ、そのまま立体パーキングを見た。

「結構、デカいな」
オレは小さくつぶやいた。

「三井くん、トランクに大きなバッグが入れてある。それを持って、オレについてきてくれ」

牧川はトランクを開けた。オレはクルマを降り、バッグを車内に持ちこんだ。

「なんですか、それ?」
オレは、運転席でバッグをまさぐる牧川に訊いた。

「あぁ、これか。これは債権整理の必需品。金融屋の七つ道具だ」
「七つ道具......」

オレは子どものころ読んだ探偵小説を思いだし、内心ワクワクした。

「ほら、これを使って小松崎のクルマを探すんだ」

牧川は、オレに小さな懐中電灯を渡した。

「シュアファイアー製(=世界各国の軍や特殊部隊で使われる強力な懐中電灯)だ。高いからな、なくさないでくれよ」

もうすでに日は傾いている。冬が近いせいか、まだ午後5時すぎだというのに、周囲は薄暗くなっていた。

「1階と地下は、キミが探せ。オレは2階を探す。いいか、ポルシェか、フェラーリだぞ。見つけたら、すぐオレにしらせるように、なっ!」

牧川は、念を押した。

「わかりました」

オレの返事を聞いて牧川はうなずき、関内のオヤジを連れて2階に上がっていく。

「さて、探してくるか」

オレは懐中電灯を照らし、クルマとナンバープレートを1台1台確認していった。
1階は入口や共用部が多いため、駐車台数が少なく10分ほどで作業を終えた。

「地下を見るか」

オレは懐中電灯を点けたまま、地下に駐車されているクルマを1台づつ照らしだした。懐中電灯の明かりは、強烈な光源となって地下のクルマを浮かびあがらせる。

そんな識別作業の途中、ミニクーパーがゆっくりと出車した。

「なんだ、あのガキ......」

クルマに乗った、太った若い男がオレをにらんでいく。
一瞬、ムッとなったが、仕事中なので相手を無視し、地下のクルマ探しを続けた。

車上荒らしかなにかと、疑っているのかもしれない。
オレは改めて、『一つ間違えれば、うしろに手が回ることになる!』といった、牧川の言葉を思いだした。
その時、赤い車体のスポーツカーが懐中電灯の光の中に照らしだされる。

「あっ!もしかして......」

オレは確認のため、1階の反対側のクルマの下に潜りこんだ。そして、懐中電灯の光を赤いスポーツカーに向かってあてた。

苦しい体勢だが、なんとか車種が確認できる。ちょうど、スッポリとナンバープレートを中心に、クルマのフロント部が浮かびあがった。

「あれ、RX‐7じゃね?」

この時代、マツダのRX‐7は女性に人気があった。

「え~っと、ナンバープレートは......品川○○の、8......7......5......か。えっ、8、7、5......は、ハナコ(=花子)か!

オレの脳裏に、駐車場の賃貸契約書に書かれた小松崎花子の署名が思いだされた。
花子はヤンキー天使として人気のある、小松崎愛の本名である。

「やった!見つけたぞ!」

オレは歓喜のあまり、勢いよく頭を上げた。


ガツン!


鈍い音がして、オレはうずくまった。