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歴史は繰り返すのか 山口組の分裂と戦国時代はソックリだった!?

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昨今、話題の山口組分裂のニュース。そのあおりを受け、さまざまな山口組関連書籍が出版されていますが、極めつけはこの一冊ではないでしょうか。題して『山口組と戦国大名』。え!? 山口組と戦国大名にいったいなんの関係が......と気になってしかたがない謎の一冊を、本サイト連載陣の山口祐二郎さんに書評していただきました。

抗争が激化する六代目山口組VS神戸山口組


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『山口組と戦国大名』著/横山茂彦 刊行/サイゾー

 2016年4月より、『六代目山口組』から分裂をした『神戸山口組』が、ついに指定暴力団認定をされた。昨年2015年8月の分裂騒動から8ヶ月ほどとなる。それからは六代目山口組と神戸山口組の抗争は激化するばかりで、相次ぐ事件が連日のように起き世間を賑わしている。

 六代目山口組の主力『弘道会』の戦闘力は凄まじいものがあるし、神戸山口組の主力『山健組』は「山健にあらざれば、山口にあらず」と語られる山口組の歴史を作ってきた武闘派組織である。

 六代目山口組とすれば神戸山口組が存在していること自体が許せないだろうし、神戸山口組からすれば六代目山口組は利己主義であるとし本来の山口組の魂がないと強烈に批判している。双方、一歩も引けぬ闘いなのである。

 一般市民を巻き込む事態にならないか、私は危惧している。

 

ヤクザと戦国大名の本?


 そのような時期に、『山口組と戦国大名』というタイムリーな一冊の本が発売された。著者は分裂前の昨年7月、同じくサイゾーから出版されベストセラーとなった、神戸山口組の舎弟頭補佐で『太田興業』の太田守正組長の自叙伝『血別 山口組百年の孤独』の編集者でもある横山茂彦氏である。長らくアウトロー本の出版に関わり、歴史本の著書も数多くある人物だ。

血で血を洗う暴力性は忌むべきものだろうが、ヤクザと戦国大名という興味の尽きない両者の共通性を比較しながら分析している斬新な一冊である。


民間暴力集団


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写真はイメージです

 著者は序章で、人類の暴力の源泉は生存欲求から出る糧を得る行為、土地争いだと鋭く措定する。それも理論理屈ではなく、実態(史実)から解明しているのだ。

 端緒として、第一部で高度な官僚システムであった律令制、貴族が始めた荘園公領制を武士が現れ破壊し、戦国時代に土地の私的所有(非課税)が実現すると、戦国大名同士は領地を奪い合い合戦し、土地や人を一つに支配せんとした事実を挙げている。そして、まさにシマや利権を奪い合い争うヤクザと同様であるとしているのだ。

 民間暴力集団として、ヤクザも戦国大名も非常に特殊で酷似した存在なのである。
 

人気商売


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写真はイメージです

 私が読んでいて面白かったのは、第二部の「人気」についての話だ。ヤクザと芸能界の関係といえば、山口組三代目、田岡一雄組長と歌手の美空ひばりさんとの仲が有名である。現在でも度々、ヤクザと芸能界は両者の合理的な利害関係で癒着があるとされる。

 しかし、長くヤクザと関わり取材してきた著者は、これらは体験も取材もしていないレポーターの脳内記事だと切り捨てる。ヤクザが芸能人のタニマチになったことはあるが、独自の結び付きが強いのだとする。これは、ヤクザのメンタリティを知らなければ分からないという。ヤクザは華やかな芸能界を好み、金を出し芸能人と関わることで自らの人気を誇示する見栄なのだと書く。

 確かに、ヤクザはメンツを極端に気にすると私も感じる。芸能人と懇意だと謳うヤクザの多きことといったらもう。また今はあまり本屋に置けなくなってきているが、実話系ヤクザ雑誌を読んで、ただ賛美するだけの記事に嫌気が指したことは少なくはない。明らかにヤクザの意を組んだの褒め殺しといわんばかりの文章なのだ。

 そして著者は、人気を意識するのは戦国大名も同じであるとする。その理由は、人気があるところに人と金が集まる原理であるからだと書く。戦国大名は評判を気にし、人気を独占しようと競い合いをした。戦の武勇はそうだが、人気を得るのに必要なのは苦しむ人々を救う宗教が欠かせないものであり、戦国大名は人気の高い寺院や仏像を争奪していたのだという。